伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十四回
佳作特別賞
晩年の煮つまる匂ひ日向ぼこ
囀りへ村はまん中から凹む
テトラポット乾きて三十五度の夏
花の昼喇叭を復習ふ女学生
目刺し焼く家が一番よきところ
語り部の減りて淋しや移民祭
神の留守時差九時間の電話受く
長き夜の誘眠剤の羊たち
政宗の眼帯ずれる菊人形
道祖神菜の花畑に寄り添いて
軒先に光り呼び込む柿すだれ
炬燵にて花見の記事をファイルする
天網のあらいざらして秋の空
チューリップ指一本でピアノひく
ストローで大夕焼に穴あける
長い長い物語や毛糸帽
また逃げる帽子が笑う春一番
仁王門借りてはためく氷旗
年齢に拘泥ってゐる蛍の夜
薄氷を歩みてみたし我が余生
菖蒲湯に野球少年もみ合へり
寒稽古少女黒帯ぐっと締め
少年をはなれて蛍風になり
古希すぎし指には重きショパンかな
百匹で川風を呑む鯉幟
菜の花やバスは扉を明けて待つ
ダンス靴持つ手の軽し年始
恋猫の尾あげ右側通りけり
よい夢を見せてやりたい布団干す
あたたかやカナリヤ色の孫の靴
参道の石も仏も日向ぼこ
霾や卵の中のうす明り
鳳仙花はじけて用事忘れけり
初凪に助けた亀が来るような
しらうおの游ぐいのちを呑む驕り
ひな壇のひし餅気になる可愛い目
終戰を知らざる母の墓洗ふ
山笑ふ住めば都のどまんなか
湖の面に全容を置き山眠る
こおろぎが鳴いても淋しくなんかない
禁断の木の実としては軽すぎし
寿命より余命と勝負去年今年
福耳に隣り合いたる新年会
囀りになりたき少女トウシューズ
白雲を肩にふんわり春の山
綾とりの橋の向うを日傘行く
落葉して空一枚となりにけり
冬帽子深目にこの世小さくをり
初燕大和沈みし海越えて
稲妻や今は静かに受け入れて