最新回結果

  • トップ
  • 最新回結果 第三十四回結果発表

伊藤園 お~いお茶新俳句大賞 第三十四回 結果発表

たくさんのご応募ありがとうございました。 応募作品数日本一の創作俳句コンテスト「伊藤園お〜いお茶新俳句大賞」。 第三十四回の応募は192万1,404句。 第一回からの累計は、4,357万7,138句となりました。 ご応募をいただき、本当にありがとうございました。 たくさんのご応募の中から、見事入賞されました作品7,000句を発表いたします。

文部科学大臣賞

初日の出とても小さい駅で見た

俳句をつくるときに、お父さんと一緒に行った阪堺電車の我孫子道駅のとても小さな駅で見た初日の出を思い出し、「ああ、あれはいい思い出だな」と思ったことから、この俳句をつくりました。

初日の出をとても小さい駅で見たとき、なにかいのちの誕生の場面のような不思議な感動を覚えたのでしょう。こんな小さな駅から、少しずつ顔を覗かせ、次第に大きくなってあたりを輝かせて行く初日の出。それは、小さないのちの誕生から、大きな成長へとつながる感動を呼び寄せてくれるのです。その景を、作者がお父さんと見ることが出来たのは、自分のいのちの立会人と一緒にいるようで、とても頼もしく嬉しく感じたに違いありません。
(選評 安西 篤)

金子兜太賞
第一回新俳句大賞から長期にわたり最終審査員を務めた金子兜太先生の功績を讃えて第三十回新俳句大賞から新設。金子兜太先生がこれまで最終審査員として選出されていた、「躍動感があり、スケールの大きさを感じる作品」を選考基準に、最終審査員の審議により選出。

UFOに会いたし湖の大焚火

家族とキャンプをするために池の畔のキャンプ場に行きました。そこの池はとても透明感があり、美しさに魅了されました。焚火用に小枝に火をつけ、薪を焼べて炭火を作っていた時、ふとUFOに会ってみたいという気持ちになりました。その焚火がまるでUFOを呼ぶように大きく燃え上がっていくようで、その時の情景や感じたことからこの俳句を詠みました。

湖での大焚火は、何ものかへの燃え盛る合図のようにも感じられますね。そうだ、この合図でUFOに会えるのかもしれない。いや、どうしても会いたいな。ここはいかにもUFOの出そうな場所だもの。UFOだって場所を選ぶに違いない。湖の水面に大焚火が照り映えて、「会いたい」と、一緒に叫んでくれているような気がして来ます。
(選評 安西 篤)

小学生の部大賞(幼児含む)

山ゆりの二百のラッパもう鳴るか

ぼくのおばあちゃんの家は近くに山があり景色のよいところです。夏休みにおばあちゃんの家へ遊びに行ったとき、山の斜面に山ゆりがたくさん咲いているのを見ました。花の形からトランペットを思い浮かべました。数えきれないほどの山ゆりのラッパが一斉に鳴りだすように見えた時のことを詠みました。

山ゆりのラッパが二百も並んで、一斉に吹き鳴らそうとしています。百のラッパでもたくさんの数を意味することになるのに、二百といえばさらに数えきれないほどの驚きになります。さて、手ぐすね引いているラッパたちは、もう吹き鳴らすのでしょうか。タクトが振られるのはいつか。待ち遠しい気持ちですね。
(選評 安西 篤)

中学生の部大賞

テレワーク父の背中と牡丹雪
テレワーク父の背中と牡丹雪

新型コロナウイルスの影響により、父の仕事はテレワークとなりました。その年の冬休みのときのことを詠んだ俳句です。朝起きてリビングに向かうと父は仕事をしており、窓の外にはひらひらと舞う牡丹雪が見えました。父の力強い背中と牡丹雪の儚い姿が印象的で今も強く心に残っています。

テレワークで、家で仕事をしているお父さん。いつもは見かけない姿だけど、やっぱり遊んでいるときとは違って、厳しくも頼もしい。外は雪が降っていて、がっしりした父の背中が降る雪にもめげない力強さです。僕も頑張らなくちゃという気持ちにさせられます。父の背中と牡丹雪の対照が鮮やかに決まって、テレワークの夜が更けてゆきます。
(選評 安西 篤)

高校生の部大賞

冬に飽き潮の匂いを嗅ぎに来た

冬に嫌なことが続いたため冬がいつもよりも長く感じ、飽きてしまいました。そこで夏を想起させる海に行き、潮の匂いを嗅ぐだけでも良いので気持ちを晴らしたい、という思いを表現しました。

どんよりした雲のたれ込める長い冬。そのせいかどうか嫌なことが続いて、いつもより冬が長く感じられるのでしょう。せめて夏の間のあの晴れやかな気分を思い出したくて、潮の匂いを嗅ぎに出かけたのです。「飽き」と「嗅ぎ」の言葉の響き合いが、やりきれない気分に耐えかねているようで、潮の匂いを一層濃くするような気がして来ますね。
(選評 安西 篤)

一般の部A大賞

ぽんかんに種ことばにはしない夢

ポンカンの実は小さいながらも、次の命を繋ぐ種が多く入っていて、たくましいと思いました。私の心の中にも、人に言ったりはしていませんが、やってみたいことや叶えたいことが、いくつもあります。ポンカンの生命力にならって、夢を育てていきたい、という気持ちを詠みました。

ぽんかんに種があるように、私にもそっと育てたい夢があるのです。それは、まだ言葉にはせず、誰にも言っていない秘密なのですが、ぽんかんの生命力にならって、人知れず自分の中で、大切に育てて行きたいのです。あのぽんかんの中の種のように、したたかに。
(選評 安西 篤)

一般の部B大賞

真つ直ぐで幸せさうな聖樹買ふ

ドイツではクリスマスに生のモミの木を買います。街角や量販店などでも売っているのですが、木を選ぶときは皆真剣です。私もなるべく真っ直ぐで、そしてなるべく幸せそうな木を、ああだこうだと時間をかけて選びます。そしてそれが見つかった時はとても幸福な気分になるのです。

年の瀬も近いクリスマスに、新しい聖樹を買うとすれば、「真つ直ぐで幸せさうな聖樹」に限ります。この気持ち、よくわかりますね。真っ直ぐな伸びやかさと、生い茂る枝葉の華やぎが、幸せそうな雰囲気をまとっているからです。それは、一家に幸せを運んでくれるに違いありません。そんな聖樹に出会える幸運もまた、格別なものといえましょう。
(選評 安西 篤)

英語俳句の部大賞

cold night
flood light vending machine(訳/ 寒い夜街灯ひとつ自販機ひとつ)

冬の寒い日、部活動の帰り道にポツンとある自動販売機の光がぼんやりと漏れていました。いつも通っている道なのですが、その日はなぜかその光景が印象的で「明日も頑張ろう」という気持ちになった時のことを詠みました。「cold night」と「flood light」で韻を踏み、敢えて「vending machine」という言葉を使う事で無機質さをイメージさせて冬の寒さを表現しました。

誰もいない光景を描こうとすると、なかなか難しい。無人のままにしたくても、描写するうちに作者自身もついどこかに現れてしまう。鏡に映りこむみたいに。寒い夜に自動販売機が街灯に照らされてポツンとあるこの大賞作品は、最低限の名詞のみで組み立てられ、人の気配を消している。ただよう空気は、アメリカの画家エドワード・ホッパーのクールな夜景に通じるものだ。自販機の中の飲み物までも「あたたかい」より「つめたい」ほうが想像される。
(選評 アーサー・ビナード  日本語直訳 星野 恒彦)

新俳句の部大賞

日々は光霞の中に書き留めて

上京して大学入学後一人暮らしをはじめたこともあり、それまで過ごした西日本での時間は良いこと悪いことがあったけれども、良いことを記憶していこうという気持ちを、お気に入りの写真を通じて表現したのがこの俳句です。「霞」という言葉が好きで、写真のグラスやランプに当たっている柔らかな光が霞のイメージとも共通性を感じてすごく綺麗だなと思っています。

俳句と写真の重なりに無理がなく、日々の複雑が見事に作品に集約され、説得力があった。
(選評 浅井 愼平)

最終審査会風景

最終審査会の様子→

審査員コメント

英語俳句審査員

  • アーサー・ビナード

    好きな俳句をいろいろ比べると微妙な差異が見えてくる。高浜虚子の「大空にとどまつてをる蜻蛉かな」と、一茶の「ともかくもあなたまかせの年の暮」は、季節も題材も違うが、作者が自分を句の中にどのくらい入れているか、その度合いも異なる。一茶のほうがたっぷり含まれている。干からびたヤモリを詠んだ「a shriveled gecko lying on the window sill ― far-off thunder」の句は、虚子の蜻蛉に近い距離の取り方だ。一方、無実なのにパトカーが通ればドキッとする「when a police car passes I didn’t do anything palpitate」という句は、一茶以上に自分を入れこんでいる。比べる楽しさが定型詩HAIKUの妙味のひとつだ。

  • 星野 恒彦

    今年もマスクを題材にした作品は多かったが、去年と違ってマスクを外している状況を詠んだ句に、よいものがありました。また英語らしく聞こえるが、英米人には通じない和製英語のため、せっかくの句想も活かせないケースが少なくないのが残念です。英語として正確に表現できているかどうかをよく検討しましょう。動詞や前置詞をやたらに省略せずにしっかり使いましょう。

部門別応募内訳

グラフ
  • X