伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十四回
佳作特別賞
春はまだ寝かされて待つ砂時計
この海星は失くした右の手袋
手話習い覚えたサインアイラヴユー
酒蔵は青大将のねぐらです
物語始まっている秋の空
あたたかな日を浴び吾子を肩車
つもる気のさらさらなくてなごり雪
秋空のどこかに時間おき忘れ
樅の木に帰りそびれた一番星
いま鳥になった気分です六十歳
年金の家計すっきり枇杷の花
寄せ書きや春の光が踊りだす
大根の肩の飛び出す日和かな
土の中春の支度でおおわらわ
春風のやうに来てゐる仏様
啓蟄や他人行儀に抜ける風
雪降ると歌いたくなる愛の歌
ヒヤシンス咲いて夫婦の黙ほぐる
六十の痩身滝に打たせけり
曖昧に生きて五合目うす紅葉
初恋のひとと見に行く春の海
夕焼けが染めて連れあい若く見え
桃の咲く子の縁談のまとまりて
若水を飲んで鏡をそっと見る
釣糸を静かに垂らす春の雲
結納の話ふくらむ牡丹の芽
地球儀のへそをはみ出す初日の出
各々の冬を着込んでバスを待つ
引き算の美学一輪フリージア
振り向けば我一人なり曼珠沙華
白梅やとっさの嘘はつけなくて
雪しんしん心に秘密ひとつあり
霜柱踏んで地球のど真中
いつまでも青いといいな地球丸
母が振る手が蝶々になりました
孫生まるあたりに告げよアマリリス
楽しくって楽しくって草青む
稲雀逃げて逆転ホームラン
春めくやいろいろな音身から出て
海を見に登り詰めたり桐の花
バリトンの蝉も混じりて息長し
段取りを猫に話して春仕度
コスモスの中より不意にブルドッグ
何言われても聞かぬふり毛糸編む
吹雪には土方巽が跳んでいる
黒猫の日向に座して睨みおり
柚実る四半世紀を待たされて
溜めたきは硝子戸越しの冬陽かな
にっこりとして本気なる雪つぶて
雪解けて野仏石に戻りけり