伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十四回
佳作特別賞
君の町なんだかみかんのにおいする
コーヒーの湯気と吐息がまじりあう
月光がはやく帰れと背中おす
着信音教えてくれた春の風
オリオン座ベルトをしめて右回り
自転車をこぎながら嗅ぐ春の匂い
電車から見えた雪は走ってた
春一番ふわっと飛んでく子供たち
日常が劇につながる演劇部
説教を風鈴の音と聞いている
極月の雨にうたれて白い猫
桟橋に君の忘れた赤い傘
アルバムが涙の訳を語り出す
位置につき風の強さに深呼吸
夕やけに心留めても足止めず
空をきるラストのひと振り夏終わる
戦闘機これが平和の爆音か
米軍よ海の青さを知ってるか
春風や笑いのおこる無言劇
試験中えんぴつ落ちる音ひびく
おばあちゃん今度は私がおんぶする
真っ先に君のを探す年賀状
アイロンのかけたて母の暖かさ
自販機におしるこ入り冬が来る
晴れの日の寂しげな目の雪だるま
合宿も残り二日や蝉時雨
黒タイツ冬の始まり白い道
ギターの弦切れて静まる秋の夜
まっ白き布にやすめる針供養
雪の山一度見に来てけらっしゃい
青空と洗濯物の日曜日
聞いていい日本はほんとに平和なの?
月の矢にこころ射抜かれ立ち尽くす
冬の海私の恋もがけっぷち
試験後はなぜか特に空広い
瀧の下マイナスイオンを深呼吸
遠くまで雪の景色が響いてく
玉ねぎが夕日に光る物理室
寒いけど冬のにおいが好きなんだ
独りより二人がいいと落花生
凍る冬こたつに入り解凍中
目の粗い父が作ったかき氷
どこへでも歩いてゆける月の道
靴ひもをしめたら私は風になる
笛ふいてつながっている暖かさ
後悔はもう戻せない砂時計
朝刊の音が聞こえる霜柱
ろう梅のように咲くのは笑い声
大掃除壁にしみこむ母の声
単線の終着駅は冬の海