伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十四回
佳作特別賞
あやとりのほうきも雪に溶けていく
風は言う春の産声聞こえたと
子狐が走りて季節をつれてくる
雄大な十勝連山雪帽子
歌留多飛び悔し涙と負けん気と
冬の宿父と一緒にレモン風呂
狼の声を揃える夜の月
空風やバツのついてくカレンダー
霜焼けで染まった耳を手で覆う
反抗期心の中では反省会
はらはらと代替わりする雪下し
はやくこいいいからだまって春よ来い
タンポポの大海原に蟻海賊
あの軍手だれもしらない雪の中
新天地燕と駆ける通学路
列島が耳を潜める除夜の鐘
踏切で気持ち伝えるが聞こえない
鼻歌が五線を泳ぐ一人旅
昔には戻りたいけど今も良し
重そうな頭を揺らす穂と赤子
檸檬採るごとく開きつ日記帳
子育ての余裕を見せるぬいぐるみ
あの頃に戻れぬ学舎春が散る
一人鍋ネギ何本でも入れていい
バンザイで眠る姿をもう少し
鳴き声で探す鳥の名朝涼し
春めくや本からのぞく黄のふせん
ママが先頭大中小の麦わら帽
子育て中私の時間は睡眠中
北風が私につける背番号
なで肩も猫背も包むぼたん雪
純文学のように降って汚れて雪
里帰り二枚重ねのマスクして
白鳥の声がしらせる年のくれ
人間も電気と同じオンとオフ
極寒で放つ一射と月と星
雪の音脳も体もリラックス
静寂な命の音と朧月
新雪は月からウサギの贈りもの
チラチラと降りゆく雪は逃げ上手
元旦や母へと回す黒電話
曼珠沙華宇宙の風に乗った祖父
リハビリの歩みを止めて虹二重
除雪機のネジも緩んで春近し
亡き父の真偽不明な武勇伝
春の土手互いのペット褒めている
東京のネオンに溶けし流れ星
留袖の紋くっきりと菊日和
帰路を横切る黒猫と大西日
髪切った毛先に春がぶらさがる