伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十回
佳作特別賞
温暖化地球が裂ける音ばかり
米を研ぐ母の水音まだ昭和
白線が残る校庭卒業す
年とらぬ影みちづれに初詣
乳母車片手で開脚春の街
方言ではずしてくれる枝の凧
木菟と内緒話をしてみたい
ハンドベル駅舎に響くクリスマス
侘助や幼なじみがひよっこりと
これ写楽あれはピカソの福笑ひ
子らもみな荷物持たされ暮の駅
藁赤き古代米なり注連作
校長の大きな顔に落花かな
路地夛き旧き街並風光る
頬被朝市の人声太き
凧あげに父親の株上げにけり
華やかな源氏絵巻や花の午后
大根畑一直線に富士に伸ぶ
家中で西瓜と平和の丸噛り
退屈の寄って来てゐる日向ぼこ
金平糖分かちて春の日溜りに
用件を切り出す前にすするお茶
椋鳥の大群一樹をのみ込めり
種袋ふれば水恋う音がする
湯豆腐や湯気を分ちて五十年
ようこそと椅子をすすめる日永かな
走り根のところどころに蕗の薹
喝采に秋を奏でる混ぜごはん
春一番冬をけとばし通り去る
薄き日を集めて杣の目刺焼く
押入にしまひ忘れし余寒かな
極楽へ少し間があり春炬燵
冬うらら五百羅漢の五官かな
ふるさとは熊に注意の村となる
立春のカステラ厚く切りにけり
十二月八日きりりと髪束ね
鴬が来てゐるという嫁の声
万太郎好みの猪口やどぜう汁
健啖は昔のことよ雑煮餅
鉛筆のコトリと落ちし寒さかな
セーターにふとポケットのない不安
牛乳の大きなコップ若葉風
寒牡丹紅のひとひら落としけり
交番から戻ってこない蝶がいる
音沙汰という風吹くあたり梅三分
病室に蛍放つを奢りとす
行く秋や性善説に棹をさす
不知火の見ゆる駅まで切符買う
薬より美人ナースで快復し
金髪を黒に戻して卒業す