伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十回
佳作特別賞
十月や紅茶の湯気の初心めく
河豚喰うて前世の恋を忘れけり
春が来るもうすぐ我が家に父も来る
空っぽの箱を抱えて春一番
小春日や猫背も伸びる午前9時
耳遠い祖母の相手は猫の役
後ろ髪ひかれる朝の床暖房
団欒の隅で輪に入る鏡餅
駄々っ子の涙乾いて寒桜
北風の力をかりて寄り添えり
運動会我が子以外はエキストラ
ギター弾く手を休めたら雪の音
まだ飲むの叱る女房が先に逝く
お気軽においでください猫じゃらし
おかえりと言う瞬間母になり
季の移り頬染め告げる桜餅
花冷えに暦見返す寝床かな
同窓会怖いもの見たさに行ってみる
小春日は過ぎ去る時間呼び戻す
桃色を重ね描いて春近し
積もる雪ケーキの街のできあがり
迂闊にも無賃乗車の赤とんぼ
どの道を行っても春の影法師
海水浴みんな地球に浮かんでる
銀盤の少女にショパンも恋をする
なごり雪ボタン代わりに手に秘める
かたつむりてるてる坊主に話しかけ
雪うさぎ楽しくはねる子ども達
大家族子供の笑顔が福をよぶ
ぽっくりと大根抜けてくる寒さ
雪降るや町の匂いを書き消して
冬服のマネキン微かに唇を開く
かくれんぼう蜻蛉にしーっと指立てる
クリスマス彼とのデートはまだ未定
水仙の花の形に独り言
鰯雲アイロンかけて伸ばそうか
マスクして少し無口な今日の母
餅伸びて切れない縁をふと願い
冬の星イヤリングにして出かけたい
ファスナーを一直線にあげて夏
ラムネの栓落ちて始まる夏の恋
夜の蟻貴方も思案中ですか
越してゆく十二月といふ峠かな
ぴったりと足に合ふ靴春隣
眩しさは心を映す白いシャツ
冬の夜心は遠くへ行きたがる
まだ来ない迷子になった福の神
髪切って最初にあなたに逢いたいの
わかるんだ雨の匂いときみの嘘
まっ白な歯がかぶりつく青りんご