伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十回
佳作特別賞
白い息ざわつく心君のせい
あの言葉あなたが猫なら言えたかも
せみの声夏とぬけがらおいていく
逃げ水の向こうで君が微笑んだ
冬の空四時半過ぎの色が好き
飛行機が綴った白い紀行文
稲妻の野性の匂いを血がかいだ
初詣巫女さんみんな知り合いだった
時計草祖母の家には針はなく
雨の音つなぎ合わせて歌にする
初夢をパズルのように思い出す
赤とんぼ父に追われて子にとまる
雪とける別れをつげた君のよう
男子校見わたすかぎりのイモ畑
満月の夜に小さな音楽会
桜道ここを通れば大人かな
切られても静かに咲いた桜の木
大輪の希望をたくす牡丹かな
ジャムパンをちぎれば香る春の色
貝がらと夏の思い出ビンにつめ
美しい君の瞳は犯罪だ
ベランダの小さき庭に春惜しむ
蚊遣火のにおい移りし祖母の家
野球帽深くかぶって走り出す
田舎から帰る車内はネギくさい
ソーダ水はじける私と太陽と
結局は優しい方に逃げるのです
悲しみは雪にかくしてしまおうか
ストーブで私の解凍あと5分
さみしげにゆれる遊具と秋の風
元朝に車道を渡る鹿に会い
せわしさもひだまりだけは異空間
木枯しでショパンの音信不通です
単語帳ひらき見つめる冬の空
男子校まるでゴリラの檻の中
母親のメールはいつも丁寧語
茜空心で描く恋の色
カレンダー巻いても巻いても反抗期
譲らないうちの家族はB型だ
はしゃいでは慣れない浴衣に足取られ
君恋し篝火草に打ち明けた
靴ひもを結ぶと今日が歩き出す
僕のかげおちこんでいるぼくみたい
あのつくしとなりのつくしとにらめっこ
マカロニの穴から見える笑顔かな
嵐吹くあの日の夜にカメ脱走
小さい秋僕たちだけでさがしに行く
闘志とは楕円に込める気持ちかな
船を漕ぎ夢という名の海原へ
初恋のすっぱさあまった16の夏