伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十二回
佳作特別賞
ただいまの声がピョンピョンはずんでる
古書店に転がっている夏休み
立読みの肩の触れ合ふ十二月
屋根裏に青蛇居たり籖を買う
夫すぐに記者の目となる消防車
大根をわが子のように抱き上げる
雛壇の一人となりて妻がいる
バレエ好きつま先ちょっと立ててみる
夜桜や猫やわらかに宙に消え
何もしないという贅沢もあり新茶くむ
冬銀河猫の孤独とすれ違う
皮ジャン着てバイクに乗る母喜寿をすぎ
春日や市民課に置く老眼鏡
原宿がいつしか巣鴨散歩道
夕焼をすくい取ってるパワーショベル
春の雲ちぎれて眠りこける母
暑中見舞最後に愛と書きしかな
なあばあさんはいおじいちゃん日向ぼこ
豆しぼり背中で眠る夏祭り
味気なき世といふなかれ唐辛子
何となくおわれるごとく落葉焚く
水餅の上ゆく淋しい帆船が
夜濯の小物ばかりを叩き干す
図書館といふ深山や西行忌
白梅や独りのときも背を正し
無印の家です今は立葵
手話の子のつぶらな瞳桃の花
毛糸編むロシア民謡愛しをり
朝刊のまとひし秋気ひろげをり
真夜中の妻のハミング菖蒲風呂
みどり児の手相くっきり星涼し
春うらゝ乳歯光って屋根の上
分別の果ての独りに至福の茶
人参の人参色で冬はじまる
正月の面白くなる齢かな
みどりごをころがして拭く十三夜
入道雲お前は誰の門番か
一人にも夕支度あり大根たく
夢のひとつは歩いて陽の中花の中
裸拭くたびに自分を消してゐる
一からの数の終りの天の川
雪解かす風あり人生肯定派
鴉にも美声のありて春隣り
ピーマンの色で迷っている料理
たくましき少女の腿の五人抜き
初蝶の風見つけては乗り移り
右肩が凝ってるバスの二人席
春昼や引けば鳴るなり小抽出
紙風船畳む中より笑い声
銭湯の富士の麓の御慶かな