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受賞作品

伊藤園 お~いお茶新俳句大賞

文部科学大臣賞

日本間は移民の郷愁濃あじさい

ブラジル 玉井 邦子 86歳

昭和のはじめ、祖母につれられブラジルに来て60年以上が経ちますが、片時も日本を忘れられません。ブラジルに住む移民の多くは、生活にゆとりができると日本間を作り、郷愁を慰めます。そんな移民の気持ちを、私の住むサンパウロでもいたるところで咲いているあじさいと一緒に句にしました。

畳が敷いてある日本間は、そこに座っているだけでやすらぎを感じる。いま日本の都市地区はマンションブームだが、一間の空間を畳敷きにしている家が多い。畳の間を見るだけで一種の安堵感、安心感がある。まして移民の方々の開拓のご苦労の中で、日本間は日本に対する郷愁そのものだ。

小学生の部大賞 (幼児含む)

トロフィーのてっぺんにある汗のあと

東京都 前田 智美 12歳

私は柔道をしていますが、柔道大会で観光協会長賞を取りました。試合が終わって表彰式になりトロフィーの授与のとき、「がんばったぞ」と声に出そうとする前に汗が落ちてきたことを思い出して作った句です。

トロフィーは汗と涙で勝ちとったものだ。よく見ればトロフィーの先端の像に汗のあとが沁みこんでいるのが見えた。優勝しての歓喜の涙と汗の跡だ。それを見て、そのときの感動が、またよみがえってくる。てっぺんの汗という見つけ方が抜群に良かった。

中学生の部大賞

鍋の中二泊三日のおでんたち

岩手県 小野寺 智也 13歳

宿題の俳句を作ろうと家の中を見渡していたとき、母が晩ごはんを作っており、鍋の中を覗くとおでんが出来ていた。そのおでんが、翌日も翌々日も食卓にあったので、それを句にしてみました。

二泊三日という捉えかたがおもしろかった。これは家族の旅行か、学生仲間たちのグループ旅行などが浮かんでくる。二泊三日の予定で用意された「おでん」の量なのか、それとも食べ切れないで二泊三日分のおでんの残りがあるのか。おもしろい着想。

高校生の部大賞

雪合戦私の“好き”も投げてやる

埼玉県 尾崎 朋恵 16歳

授業中に作った句ですが、その頃は雪が降っていたので小学生によくした雪合戦を題材にイメージしてつくりました。

新鮮な着想で、高校生らしいロマンを感じ好ましかった。雪つぶても投げるけれど、めざす相手には“好き”という感情をこめて余計につよく投げる。好きだからという思いが作者の頭の中と手の動作の中で交錯しているのがユニークだった。

一般の部A大賞 (40歳未満)

ネクタイをゆるめ雲の名一つ知る

青森県 三浦 潤子 38歳

川柳の教室に一年ほど通っていますが、新俳句大賞応募しようと考えていたときの課題が「雲」でした。そこで、雲とお茶を飲むことを考えたとき、サラリーマンが仕事の合間にネクタイを緩めてお茶を飲み空を見上げて「ホッ」と一息ついているところが浮かんだので句にしました。

仕事が済んでの帰り途という感じ。ネクタイをゆるめ開放感に浸っているひととき。ふと空を眺めて雲を眺める。例えば誰かがあれは春の浮雲だと言い、それを聞いて頷いている自分がある。それも開放感のある一刻のことであろう。

一般の部B大賞 (65歳未満)

少年の深いところにいた螢

岡山県 安東 千世子 64歳

ちょうどこの句を作るときに、テレビや新聞で少年犯罪のことを毎日のように取り上げていました。いかにも少年たちが悪いといった風潮があるなかで、私自身は少年たちを信じてあげたい、頑張ってという気持ちがあり、それを句にしたものです。この句は、私自身の希望であり、少年への応援なのです。

少年には色々なイメージがある。純真さの半面、非行につながる面もあり、現代の少年像を見えにくくしている。そしてその少年の心の深いところに灯りをともすように螢が居る。その螢こそ少年の救いの像なのか希望の光なのか、作者は自問自答している。

一般の部C大賞 (65歳以上)

一銭五厘のいのちながらえ雪と住む

北海道 早川 たけお 77歳

昭和19年私は、満州で三等兵として馬の世話を任務としていました。ある時、馬の世話をしている私たちに向かって上官が「おまえたちは一銭五厘※で買えるが馬は買えない。だから大事に面倒をみろ」といわれました。そのことを思い出して作りました。※戦時中は、出兵の通知をする「赤紙」の郵送料が一銭五厘であった。

戦争時代の召集令状は赤紙と称し、一銭五厘のハガキだった。容赦もなく、戦場に駆り立てられた負の時代。運よく帰還できて故郷に帰れても、きびしい雪の環境が待っている。その中でいのちながらえ生きてきた作者の生命力と勇気を讃えたい。

英語俳句の部大賞

The moon reflecting-
in the silver river
of the owl's eyes 訳/ 月が映るふくろうの眼の銀色の川

ユーゴスラビア Branislav Brzakovic 33歳

ふくろうの両眼に流れる銀色の川に映る月影を詠っているもので、訳を短詩型にまとめ難く、特にmoonshineではなくreflectingとする作意には訳がとどきかねました。それだけに興味をそそる作品と言えましょう。ギリシアではふくろうは知恵の神(の使者)とされています。よりよい訳をこのふくろうにお願いしたいものです。(竹下 流彩)

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