伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十一回
都道府県賞
千葉県
泳ぎたい海より遠く宇宙まで
ねむいけどほっぺつねって新年だ
うえのえきさくらはなれてみるのすき
らっきょうを噛みしめてみた二十五歳
もたれくる二歳の重さ夕薄暑
東京都
手を入れてあまいの出るかみかん箱
ペン回しそのまま時を早送り
誤字ばかりそれでもメールくれる祖母
妻に問う育休取ると邪魔ですか
大くしゃみ思い出せぬ名飛び出せり
神奈川県
かあさんとねるぽかぽかのふゆのよる
下じきで涼み目が合う授業中
沈黙が距離をちぢめる夏の夜
眠る子に聞こえぬように米を研ぐ
全員の負けとなりたる水鉄砲
新潟県
白鳥と目が合う朝のたんぼ道
恵方巻き意外と迷う願い事
海開き足で海水切り開く
キラキラリ化粧を楽しむ雪の精
教室のめだかは何でも知っている
富山県
冬休みけん玉ばかり上達し
寒すぎてお湯まで走る露天風呂
裏返る百足の脚が笑ってる
秋暮れてワインは甘くなくていい
今穫れと肩のせり出す大根かな
石川県
カタツムリ見掛けは怠惰だが必死
オイラーの等式滲む炎天下
フルーツに野菜にさん付け母になる
いなびかり横隔膜が揺れてゐる
しぐるるや旅に三日目蕎麦啜る
福井県
春寒し田んぼの畔に猫二ひき
新緑はきっと偶数かもしれぬ
台風禍糠床にぐっと手を入れる
寒林は綺麗な僕の心電図
チューリップ唄えばつながる四世代
山梨県
ちょきんばこ百てんとるとおもくなる
おおみそか宿題だけがふりつもる
シャーペンのしんの太さの霜柱
蜘蛛の囲のLP盤めき光る朝
蒲公英の野辺一面にラプソディー
長野県
白息にはにかむ君で暖をとる
カーテンをかえたら私鳥になる
読みかけの版画集から風薫る
きっと虹つかみにいった寝相かな
次の世は医者になりたし大根煮る
岐阜県
比べちゃう自分の顔とパンジーを
どこにでも入ってはしゃぐ隙間風
椅子二つ足している母年の夜
しまわれてうつむき加減の扇風機
生き生きと女装の男子文化祭
静岡県
夕焼けに染まった背中見て帰る
クワガタを見てもワクワクもうしない
猫溶けた窓辺蜜色春溜り
蛇穴を出て玄関で待たないで
風光る自転車サイズの町が好き