伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十一回
佳作特別賞
悔しさとギターを背負う夜の街
てんとう虫ななつの願い運んでく
木の実落つ昨日の夜の水たまり
毛糸編む私の色に染めていく
思うまま山々染める竜田姫
単語帳めくりめぐって桜道
夕暮れの橙と街の橙と
母親に教わる昭和のアイドルヘアー
朝焼けにひとつあくびが溶けてゆく
脱皮する蝉の白さや木の香り
今日の日が氷とともに溶けてゆく
海月刺す私の恋は泡の中
海月みて交わる視線ガラス越し
ペダル漕ぐ速さは「好き」に比例して
母からの電話が減った十二月
浴室の電気みたいな満月だ
本当は私を見てる流れ星
車窓からかつての故郷通過点
買い被りするのは冬の帽子だけ
自由帳めくってのぞく夏の風
赤ん坊のもの干されいて冬うらら
八月が雲の背中に燃えうつる
七五三歯抜けの笑顔のいとおしい
朝食の横に母からバレンタイン
青空が虚ろに見ゆる冬の蝶
日本語が遠慮している盆踊り
触れないで思春期の我鳳仙花
東京は川の流れも知らぬ顔
薄氷にト音記号のようなひび
浴室の五十音表初ざくら
病身に負けない心芽吹く朝
掌中の銅貨が匂う大夕立
入道雲空の高さを探りけり
アレソレと爺婆話す落ち葉焚き
春風や海老がはみ出す海鮮丼
ペンギンも鳥の眼をして千代の春
空蝉が静かに抱いている昨日
冬景色昔話になりにけり
ふるさとは酢飯の匂ふ秋祭
文庫本積んでヒマラヤ制覇する
豆苗のすつくと立つて日脚伸ぶ
街路樹はダンスのリズム青嵐
とまらせて神の軽さのアキアカネ
栗の花咲いて明日は休診日
メガホンの売り声太き油照り
山肌に翁めく影雪斑
木魚ぽくぽく牡丹の芽を殖やす
阿波踊り見物人も浮いてくる
猫背にはなりたくはなし冬籠
ろくがつに水と水の合しょうだ