伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十一回
佳作特別賞
深呼吸空へと雪が帰ってく
秋雨が降りしきる夜に手紙来る
ラケットをたずさえて行く朝顔市
水羊羹冷やしておいたはずなのに
ぼくだって布団の中で丸くなる
霜柱刻むリズムと好奇心
昨朝と同じ日だろうか初日の出
鍋の夜みんな眼鏡をはずしだす
初写真零時零分零々秒
年賀状塾から一枚自分宛て
初市の凍てたる鮪同じ顔
霜枯れや歯車欠けしオルゴール
校庭に虹をつくった散水機
鞦韆や成層圏に風一つ
春風が私と水面をさわがせる
ただひとり定期券買う冬の朝
セミの子を見届けた夜の僕と父
冴ゆる空昨日と今日の境無し
夏の海ペットボトルに閉じ込める
囀をくぐって始業にすべりこみ
出遅れてひとり漂う雪虫や
鈴虫や夜にうるさい冷蔵庫
仰向けの私の靴と入道雲
ローファーとなびく黒髪春光る
お雑煮で心も溶ける午後一時
寒稽古道場の中燃え盛る
息吐いて自分で作る雪景色
寒いねと嘘つき君を抱きよせる
沈黙で動きが鈍るボールペン
虫の声重いかばんを道におき
赤信号息を切らせば冬が来る
会社員山茶花のごとく電車乗る
待ちわびて背丈を測る子供の日
春風が校門までの案内人
寝正月隣にサメのぬいぐるみ
バリカンが刈り込む父の衣替え
紙めくる音が重なる試験場
日常を過ごしていると年明ける
太平洋僕の声をも吸いとった
僕たちの不完全な夜青い冬
風の子は卒業しました十六歳
マラソンの息が過ぎたる霜日和
妹よサンタにあまり無理言うな
速歩で神社参れば吉の紙
バレンタイン静かに秘める恋心
冬休み宿題少しとなめていた
年越しを静けさの中一人跳ぶ
冬枯れとヒロシマの空ひとり立つ
赤とんぼ君もひとりか僕もひとりか
好きなのに遊んでくれない爬虫類