伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
都道府県賞
広島県
池のこいこおりの下はどんなせかい
マフラーのまき方変える恋始め
日本地図下から見るとリスになる
仔馬の足支えているよ青草が
雛人形今では自分で準備する
山口県
涙さえ吸い込む青空桜桃忌
香水の瓶に詰めたる憂ひかな
留守電の消せぬ声あり冬の星
枯葉踏む歩幅は狭き湯守り人
一茶にも兜太にもなり春灯
徳島県
秋の風かれはにのって出ぱつだ
神棚とぼくの心をそうじする
方言が抜けてきた頃帰省する
産声が師走の朝に透き通る
主語のなき会話で弾む老の春
香川県
ラムネ干す子まだ喉仏持たぬ
秒針に吸い込まれそうな大晦日
冬の街光と影の反射鏡
木守柿父の書斎の煙草盆
寒椿きれいな耳をもち歩く
愛媛県
ふり仮名をつける優しさ春眠し
鰯雲少しお話しませんか
お正月やけに素直な子どもたち
春眠はバナナの中にいるような
裸の子雲に匂があると言う
高知県
君の声私の心をたんぽぽにする
石の上セミのぬけがら少年期
放課後の迫る夕刻本の森
如月よ何をそんなに急ぐのか
靴紐を直すと傍にはどんぐりが
福岡県
鳴り響く光のような除夜の鐘
教室に残していくのは夕日だけ
ふわふわの心で焼けたよホットケーキ
春うらら時計回りの寝相かな
扇風機進化の過程で羽なくす
佐賀県
洗たくき服のよごれを食べてゆく
弓始め吐く息白く空気射る
山見つつ光の坂を大滑走
スエードの靴をおろして秋を踏む
夏がゆくこわれたラジオと波の音
長崎県
花ふぶき花から私へ手紙です
ひまわりも今日は日傘がいるみたい
弟に秘密が増えたクリスマス
冬支度去年の思い出ポケットから
ランドセルそっとひとなで薄ぼこり
熊本県
天の川宇宙の向こうへ会いにいく
さようなら手のひらあげて秋おわる
春風をリュックに入れて登校す
コオロギを胸ポケットに連れ帰る
添い寝して結んだ手と手そっと解く
大分県
くぬぎの樹坂を転がる秋一つ
あじさいに滴る水は星のよう
普段着のあなたに会いに夏期講習
風花よ故郷はもう積もったか
夜桜に蒔絵の中の人となる