伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
審査員賞
ふゆの川ふしぎな石が見つかった
この情景はぼくの記憶の中にも鮮やかにあります。 人は宇宙と結(つな)がっているのですね。
満月が光をそそぐ村の井戸
実に美しい光景。一行十七音字を生かし切った美事な俳句です。この村の井戸は11歳の石川玲衣さんのこの作品によって永遠にこの世に存在しつづけるでしょう。こんな句を私も詠みたいです。
流れ星トルコ行進曲響く
流れ星とトルコ行進曲、確かに相性抜群の組み合わせですね! 中谷はるさんの瑞々しい感性、自然や音楽への関心の高さをこの一句から感じます。
まぶしいなやっぱりあの人野菊かな
望夢さんの俳句、私もまぶしい気持になりました。ういういしくて素敵です。 小説「野菊の墓」や映画、「野菊の如き君なりき」に胸をときめかした頃がよみがえりました。
天井に鬼の顔見る熱帯夜
寝苦しい夏の夜、暗い天井を仰いでいるうちに、鬼のような顔が見えてきました。その正体は今日の小さな後悔だったり、明日への憂鬱だったり。熱帯夜の闇の淀みは、人の心の淀みをよく映し出すのでしょう。
ほうれん草手紙のように置いてある
ほうれん草は春の食膳に親しまれているお菜で、浸しもの、和えもの、煮ものなど、広く用いられ、栄養に富んだ食材です。 「手紙のように置いてある」のは、母からの便りのように、いつも傍らに置いて賞味しようということでしょう。ほうれん草は母から送られてきたものかもしれません。
リボンつけペットにしたい桜餅
桜餅には東と西の二種類あって、掲句の桜餅は道明寺ではなかろうか。愛らしい形をしているが、それをこともあろうにペットにしたいという思いつきが意表をついて楽しく、共感できる。
アネモネやピアノ教室みんなでラ
ピアノ教室から同じ音が聞こえてくる。みんなで一斉に「ラ」を鳴らしているのだ。単音しかないレッスン。なんだか春の少し間抜けな温かさが感じられる。アネモネのひらひらした軽さもいい。色や風や温度が伝わる。