伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
歳時記にひらりと小鳥太平洋
足音や握ったたすきつなぐまで
喜びを昆布で包み閉じこめる
メゾフォルテ優しく静かに散紅葉
たんぽぽの綿毛が今日のお客様
水きりの音といっしょに風の声
緑の芽さびしい道に頭出す
空っぽのロッカー九月初めの日
新学期ロボットみたいな自己紹介
オリオンにあいさつしてから雨戸閉め
これだけは手加減なしだ雪合戦
借りた本挟まっていた鳥の羽
花の道まっすぐ歩けば新学期
ぶらんこ降りて足元にある目眩
春風がつれてきたのは花の声
好きな子に思いよとどけ水てっぽう
習字あり一画書けば新年に
おじいちゃん去年も聞いたその話
悴む手綴る願書に揺れるペン
こつこつと響く足音二人きり
水の中カエルになりきり一等賞
冬の息優しく包む言葉かな
空っぽのペットボトルに入れる春
ひんやりとつめたい制服新学期
立ち上がれ鹿の子みたいに何回も
のぞきこむと僕だけの世界水たまり
本めくる指かすれてて冬を知る
春近く心臓の音響きだす
切りすぎた髪マフラーをギュッと巻く
身は二つ心は一つ雪だるま
福寿草送る相手はおばあちゃん
寒いです窓に文字が書けるくらい
見上げれば鯉が三匹うろこ雲
なりひびく秒針の音年こえる
えんぴつを紙にはしらせ夏終わる
家の前蜜柑の木々に鈴がなる
氷河期が冬の窓辺の地球儀に
教科書と勝負のつかぬにらめっこ
風鈴が私の心を水色に
つばめの巣少し大きくリニューアル
ほっぺたにえさをつめこみ冬仕たく
芽吹く木々太古の技術の伝道師
コンクール汗ばむ私とフルートと
テスト中頭の中はポップコーン
いのししが最後の平成かけぬける
冬の夜は黒くて深くなつかしい
手についたマーカーおちない春の宵
親の前桜のような嘘をつく
暗黒の一本道に私だけ
その距離は僕とそっくりさくらんぼ