伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
富士登山豆腐みたいな旅疲れ
百日紅一浪の部屋覗き咲く
奴凧糸の長さの自由かな
ハンカチを落して見ても独りかな
稲光り一秒間の別世界
柿一つ母屋守りて日の暮るる
ジョーカーを引いても真顔初炬燵
石鹸玉なぜかひとつが戾り来る
退屈になれば潜りてかいつぶり
蝉が啼く生きる憂いか悦びか
のどけしや人形の髪梳いてゐる
束縛のなくてつまらぬ心太
二月早や花舗より目覚む水の音
少年のぼそと挨拶青葡萄
春光の一湾を抱く漁師町
重き影水に捨て発つ大白鳥
ふるさとは疎開のあの日螢狩り
蛇出でて流れゆたかになりにけり
囀りを聞かんと眼鏡ふきにけり
黄金の袋効きさう風邪薬
大津絵の鬼もまどろむ目借時
立春の木立と呼吸を同じくす
花虻や真っ直ぐ行かぬ子の行方
赤ちゃんを抱いて師走の美容院
老いる事生きる証や冷奴
ズボン丈つめて米寿の更衣
城門の甍をかすめ鳥渡る
頬杖の倒れそうなる蝶の昼
女郎花活けて野の風呼びいたり
蒲公英で愛を選択嫌い好き
角巻に顔を埋めて過去が来る
着ぶくれて人の後ろに並びたり
灯台の風に総立ち枯虎杖
わが齢露にも足らぬ大河かな
奥入瀬の濁流白き青葉かな
謂われなきものに躓く寒さかな
野遊びのどんな犬でも可愛いね