伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
地球儀に辿る任地や雁渡る
はらからの老いて童心小正月
人の世を泳ぎ疲れて端居かな
笹竹の揺れを映して白障子
一人居の大黒柱冬日差す
桜餅食ふてほどよき夫婦仲
AIのロボット撫でて冬ごもる
リュウグウへ着地地球の亀の鳴く
この星に生まれた奇跡冬銀河
いちめんの黄色の風が春運ぶ
夫婦して手相見せ合ふ長火鉢
遠赤城神饌田に案山子立ちにけり
漁継がぬ児が遠泳の先を行く
美術館行ったり来たり黒揚羽
あの頃の話ふくらむ土瓶蒸し
凧揚げの広場が招く里帰り
針の目が真つすぐ揃ひあたたかし
啓蟄や地球にちょっと穴を開け
囀りは地球が怒らないように
道場に剣士一礼白菖蒲
フーテンの寅さん気取る恋の猫
のほほんとくらしてみたいたんぽぽよ
五秒差の半熟玉子山笑ふ
一対の雛に家族の月日かな
マドンナがよいしょと立った同窓会
青き踏むピアニッシモの風の中
葺き替へし屋根濡るるかな月明り
囀りや猫がこぞって家出する
鍵失くし枯葉の底まで掻き回す
節分や床に画きし昼星座
花衣今も違はぬ身だしなみ
針一本にも影のあり一葉忌
春の海島より高き船がゆく
孫の顔因数分解福笑い
望郷のしゃぼん玉から割れてゆく
世の中を自由形だけで泳いでる
鶯の四十五度に鳴く姿勢
菜の花の咲きて元号新しき
浴衣着て物買う芸妓の白き腕
目に映るものみな美しき老いの春
村祭り出を待つ父の別の顔
秋うらら毛布のやうな犬に会ふ
もらはれて名前の変はる子猫かな
すり鉢の底から匂ふふきのとう
老木の桜が村の起爆剤
初詣英語の絵馬が二枚ある
噴水の向かうの少女手話で応ふ
のど飴をバックに隠し山桜
重ね着や一番奥に嘘を着る
寺巡り心にしみる秋日和