伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
紅葉や毘沙門天とにらめっこ
秋晴れの真ん真ん中にファンファーレ
妹がそっと放した兄の蝶
勇気とは上昇気流雲の峰
音までも突き刺すように冬の川
一番に登校の子や金木犀
カピバラの小さき欠伸や風光る
子の嘘の瑞々しさよ三が日
重力にどっぷり浸かる大鮟鱇
渡りゆく風の山里青蜜柑
ボールペンノックをすれば春が出る
鶏頭の色を盗みて野分去る
朝顔の間引き逃れし双葉かな
マスク着け母の背さする骨さする
南瓜の支点力点サンエンス
フルムーンぱくっと食べた池の鯉
冬枯れの梢や空の罅となり
クリスマスソング溢れる日のカレー
針はこぶ母の背中に「ゆき」と書く
どろ亀の口いっぱいに春日かな
みかん分け家族ごつこをしてをりぬ
ささゆりや匂ふ山風空青し
豊作を飲み込むように獅子の口
抜けそうでぬけぬ乳歯の卒業子
柿たわわこの村昔子沢山
縄梯子下りて来そうな春の雲
背番号の無きユニフォーム夏終わる
青春は鉄路の先に遠ざかり
幸せになれるスイッチ春の虹
大夕焼きのうの我を許そうか
ガラス器の指紋拭きとる一葉忌
高跳びの棒が地球を突き放す
冴え返る乱歩全集緋の表紙
アビニヨンの橋のある地図春帽子
カタカナのように育ちし日焼の子
なで肩の四十女や春の山
不揃いのおむすび六つ山笑う
新調の白のスニーカー鰡飛んだ
団塊にもう一花の五輪来る
ポケットの団子虫出す夏帽子
富士山をしぼったような清水飲む
秋刀魚焼く太平洋の塩かけて
臥竜梅無学は俺の免罪符
蒲公英の殖えて廃校三年目
矢をつがひ絞りて一瞬百舌の声
坂の上夏雲だけがそそり立つ
芍薬や縞の野良着の母がいる
調律のひびき蛙の目借時
バイオリンケース抱える少女春兆す
遠き日の大観峰も夕焼けて
