伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
シャンプーのポンプの軽さ水温む
ダックスの耳裏返して春一番
懸垂の力尽きたり鰯雲
未完なるものに惹かるる師走かな
湯豆腐にチョイワルオヤジの崩れゆく
花びらを透かして見ている遠い日々
りんご飴なんだかズルい感じする
気づいてたその優しさに枇杷の花
湯豆腐のゆれて双子座流星群
七十になれば無敵や唐辛子
薄氷の亀裂の中に空光る
チョコレート貰って父は溶けてゆく
漂泊を海月に習ふ余生かな
赤ちゃんのオナラの力山笑う
みしみしと床を鳴らして西瓜来る
春愁や打たれ強きはパンの生地
幼児の口真似戯れに笑いこけ
運動会今年も孫はフライング
孫帰る暴風一過皿の山
白鯨と出遇う果てなき雪原野
腕を上げ空に半円描く春
豊作の穂波の先に神楽殿
魂をぶら下げており凌霄花
積木するただひたすらに春を待つ
昨日までかくれていたの万年青の実
かくれんぼ今日もやさしい鬼になる
単線に添ひて薄の白く揺れ
猫の恋ちちんぷいぷい飛んでいけ
燕来るただそれだけで好きな町
数学の一問を解く夏座敷
地下道に色なきこだま冬に入る
深呼吸ユニットバスに柚子ひとつ
薄氷の光ついばむ鴨の群れ
左義長や夢の半紙を巻き上げし
飛び込んで君は主役や夏の川
来し方の風音ばかり野水仙
托鉢の僧を冬帝追ひ越せず
風景は自分の中の紙芝居
歯ブラシは今や一本猫じゃらし
笑うべきところで泣いた卒業日
言葉尻千切れたあの日の青嵐
身の内に非常階段雲の峰
蓬摘む人みて蓬摘みにけり
真っ白な心にもどる滝しぶき
全身が心臓になり山笑ふ
ドローンは敵か味方か鬼やんま
疎疎として咲き始めたり寒椿
初蝶のとなり町まで飛んでみた
浴衣もワンピースも色違いだったね妹よ
遠い日の銀河の雫我が命