伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
ファスナーを閉めて寒林入りにけり
大凧と一つ光の中にをり
叱られていつも見つめた足の先
ママ友になれるといいな春の雲
親になる面構えかな初鏡
やはらかきラジオの電波夜半の春
よさこいの声と熱気が天響く
通勤の車窓に映る知らぬ自分
夕立に濡れたあの日の未来地図
頑張って起きろ我が家の瓜坊よ
雷神が機嫌悪くて雨宿り
落葉踏むお菓子の家に辿り着く
五月雨をはさんで食べるハンバーグ
でこぼこの影が伸びてく帰り道
通学路入道雲に塩素の香
かたぐるま紅葉乞う手もまたもみじ
ほうれん草大事に茹でる昼下がり
風光る器用に廻すボールペン
道草の青空桜満開中
胎動が除夜の鐘と重なる夜
真っ白なパズルのピースが一つ欠け
猪にかじられた俺の六ヶ月
水源に神を祀りて涼しさよ
満月をちいさなゆびで教えられ
子の歌や落ち葉の歌や風に乗り
シーサーの吠える咆哮メンソーレ
足音が教えてくれる子の名前
朝霧や内気な木々の仕業かな
千年後星座は同じ絵を描き
トーストの上に乗せたい初日の出
鰯雲特別何もなく過ぎぬ
ラブレター月の兎と相談す
小さき手でつくる友達ゆきうさぎ
月曜の日焼けしてゐる銀行員
操輪のつま先香る菜の花よ
水紋を描いて紅の寒椿
赤子背に黒豆煮てる年の暮
父となり寒暁の日本海眺む
新米を担ぎし父の丸き背
幼子の小さな紅葉を包み込む
母ちゃんの手がすべすべになって春
せりなずな家族揃って続き出ず
冬すばる深夜ラジオへ書く葉書
背伸びして歩いた夕焼け追い越して
友の名をたくさん書いた初日記
一粒の勇気握って鬼やらい
湯につかり自分を許す師走かな
金木犀彼方の想いを風に乗せ
団栗の言った言わない背比べ
おいと言ひはいと言はれて伊勢まゐり