伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十回
佳作特別賞
いつからだ涙が出ない寂しさは
私にだけ話しかけてるラジオの声
つり革の共に動きし暮れの秋
黄落すいつか地層となる谷へ
下萌や背筋わずかに伸びにけり
冬の夜片耳で聞く除夜の鐘
昇る湯気降りる綿雪肌に染む
秋風がくしゃみしたので缶蹴った
働いてわが身にしみる冬の空
幸せと妻に言わされ酒を飲む
灯油切れ無言で始まるジャンケンが
煌めきをしょい込み走るランドセル
言の葉が記憶に映るインク瓶
貝殻の中の夕方秋近し
突然の雨のトリルに太鼓屋根
一人暮らし取れたままのカフス1つ
雑踏のアスファルトにも鬼の豆
春風と一緒に来た君ポニーテール
風船を追いかけ身体しぼんでく
自転車と並走してるしろばんば
洗濯機呼んでいるけど昼寝中
モノクロの夜の静寂の夏の川
寡黙父お風呂の中ではアーティスト
紅葉をひとりで眺め人見知り
桜散る私の心はここにある
時を止め眺めていたい線香花火
山茶花の散り行く下に笠地蔵
金木犀学生カバンのキーホルダー
落ち葉つく小さな靴の大冒険
バランスをとる縁石の上に瓜
片一方靴下無くす春隣
襟巻を喉まで下げる子の打席
冷蔵庫君も有給が欲しいかい
新しい風に目覚ますつくしんぼ
リクルートスーツの私丸の内
春眠や回覧板の落ちる音
大晦日祖父の袢纏父にかけ
転勤の無地ネクタイへ春一番
書初めや硯の外で子ら遊ぶ
文庫本位置を戻して春を待つ
ジャズかけて毛布にとかす現かな
見上げてた風鈴の紐今ほどく
分かったよ何十回と炬燵から
行き慣れた眼科に小さき垂氷かな
生まれ立ての涙が頬にしがみつく
太陽を目玉に見立て鰯雲
雨上がり世界を揺らす君の傘
下るより上っていたい桜坂
社会人父の苦労をちょっと知る
出し過ぎたハンドクリーム能登の冬