伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第二十九回
都道府県賞
北海道
思い出の中でも溶ける雪だるま
幸せのショートカットで夏勝負
冬が来る私の五感は知っている
帰れないあなたを祭りに誘うまで
黒豆を食べに帰るという息子
青森県
赤とんぼ一人でぼうけん自由だな
雪の下もぐらがせっせと工事中
てのひらに小魚すくう春の水
ゆく人の履歴が残る雪の道
会いに行く理由がほしい夏の月
岩手県
朝いちばんサドルの露を拭いてゆく
よく笑う母ですさくら満開です
畑から手を振る祖母がくれた夏
稲刈やオーナー制の千枚田
かたくなに口を結ぶ子猫柳
宮城県
母ちゃんの麦茶一口夏が来る
悩みごとちっぽけだなと月をみて
詰め込んだキャリーケースと盆休み
たんぽぽも夢を持つのと問う瞳
春というタオルケットにくるまれる
秋田県
くやしさが枯れ葉になって落ちてくる
暑いねとそっと麦茶を手渡した
なごり雪本日母校閉校す
カピバラの湯船にふわり雪の花
美術室大向日葵が覗いてる
山形県
ゆきだるまほしをみながらいびきかく
白鳥と共に空飛ぶ白い雲
ぬれた頬触れる桜はやわらかい
鍵盤のタッチかろやか水温む
脱ぎ捨てたコートに雪の匂ひあり
福島県
夕やけがりんごといっしょにそまってく
「青春」を意訳するなら「いちご」かな
春一番シャツは空へと行きたがり
ザバザバと食む晩秋のシュレッダー
あの雲にたんぽぽ咲いていないかな
茨城県
お父さん雪の中から帰って来た
ウグイスに止まられ微笑む大仏様
向日葵の波を駆け抜け秘密基地
初恋は実らなくとも春は来る
春愁をすきまに詰めて旅鞄
栃木県
北風はいつもどこかで吼えている
山笑う制服パリッと着こなして
煮干し見てメダカだよねと笑う甥
サンタへの手紙で気付く子の成長
菜の花や旧仮名遣いの坂の町
群馬県
春風と共にたばねる君の髪
フェンス越し友に届けと声からし
自転車で挑む上州からっ風
春うらら掃除ロボット充電中
缶蹴りの少女ひらりと秋夕焼
埼玉県
応援がいっぱいつまるにぎりめし
月をみる見えない世界に灯がともる
アサガオの隣に君の焼けた肌
ヤドカリよ俺もまだまだ仮の宿
雨粒のすだれを覗く幼い目
