伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十九回
佳作特別賞
行間に何も埋めない父の文
宇宙から見えるんだって烏賊釣り船
新松子二人に戻った縄電車
やっとやっと音譜の如き山茶花よ
本音では淋しいと言う行々子
人生の自由時間の猫じやらし
葉桜の風聴く遊びわれ八十路
タンポポを避けて補修の保線工
風呂吹やあの人この人みな遠い
磨かれしボーイソプラノ寒稽古
愛用の楽器持ち寄り月祀る
鈴生りしライブみたいなあけびかな
割り算が大好き西瓜割り切れる
更衣箪笥の中の海の色
ダンサーの鼓動は早し金魚草
風呂敷に銀河を包む手品かな
山茶花の家より弾むピアノかな
枯蓮の奥に星座の物語
木漏れ日をすくってみたい冬の午後
菜の花と鳥語の囲む尊徳像
枇杷の花青信号に変はるまで
黒猫は黒のまんまで日向ぼこ
小春日や「待つた」「待てぬ」のへぼ将棋
幹に耳あてて開花を尋ねけり
割り算に残る余生や秋夕焼け
リンゴ剥く部屋に大きな平和の香
雪合戦微妙にずれる父の球
遠足に一本のバナナ入れた母
雲切れて急に明るし春障子
マネキンを抱いてブーツを履かせけり
晩学に追ひかけられて初桜
絵手紙やずしりと重き赤かぶら
青草に脱ぎ捨てられしスニーカー
梅の香をやさしく語る手話の指
灯台が傾いている夏の海
人間を休みたくなる冷奴
冬たんぽぽ日だまりに置く母の椅子
滝壺を流れて枯葉岩を打つ
軒下を平和と信じ来るつばめ
木製のポストことんと春立てり
桜蕊降る逆上がり未完成
百態の怪獣動く秋の空
登校の児童君らは宇宙人
一晩で音閉じ込めた雪の朝
ロボットに埴輪ならびて水温む
マヨネーズ逆立ちしてる冷蔵庫
あどけない息で生まるるシャボン玉
十人の花いちもんめ花の下
一斉に飛ぶしゃぼん玉ぱぴぷぺぽ
法師蝉ここで聴くとは青砥駅