伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十九回
佳作特別賞
円熟はやがて目に見ゆ秋薊
少子化の屋根裏に住むアライグマ
このメニュー美味しそうよりインスタ映え
紫陽花と雫が語るものがたり
調弦の音に誘われ春うらら
からころと春をまわして万華鏡
庭土に寝かせられたる大根かな
見えるものだけを信じたうさぎの子
止まらない前世はきっと回遊魚
花散らし傘に名残の色がつく
春泥の僅かにかをる指相撲
年取るとぬいぐるみにも話すのさ
あの駅に行けばつながるふるさとへ
夕焼けが隠し味です今日の鍋
初蝶の止まるポストに投函す
蒲団干し明日の自分をふくらます
白球をただ真っ直ぐにつなぐ夏
毛糸編むこころにかたちあるならば
キラキララ水と呼び合う小鳥たち
花びらを笑顔めがけて吹き咲かす
電車待つ人差し指に冬来たる
実石榴や右脳と左脳が会話する
鏡拭く朝一番の風光る
早春やベビーカーから目鼻だけ
御日様を喰らおうとせん鯉のぼり
おもちゃ屋の行列みんなサンタさん
話しなど噛み合わずとも毛糸編む
母という圧の過ぎたる掛布団
薫風を確かめている深呼吸
オリオン座幾何を習った頃があり
茶の花の充ちて中間管理職
黒猫のするりとぬけて夏暖簾
愛犬に話すように私にも
君の肩風花のごとくふれてみる
リセットのボタンがなくて夏の果て
吊革の揺るるリズムに眠る山
道草をして引き止めた春の恋
振り向かず進む背中に春の風
叱らない子育てなのねスイートピー
ゲーム機の中を旅して終わる夏
鳥影にまさる濃さなり梅雨の川
寒風に響き渡って灯油売り
蜩や経も一時涼みけり
故郷のバスを待つ間に秋がくる
マフラーであんまん包み急ぐ帰路
知らぬ者だから話せる冬の駅
吸い込まれそうなあなたの目の銀河
贅沢な愚痴こぼしあい日向ぼっこ
カート持ち特売品まで9秒台
振り向いて迷うふりするおじぎ草