伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十九回
佳作特別賞
風の子に戻れはしないもうずっと
白い息あかぎれ包む誇りの手
母を呼ぶ父は時々中学生
潮騒へひと夏の恋ぶん投げる
泣き声に返事しながら炊事して
カーテンの裏地も可愛い春隣
削除したアドレス想う夏の夜
言の葉を掬って捨てし聖夜かな
洋梨を二つ並べて美術館
目黒川花人たちも流れ行く
向日葵と並んで浴びる水しぶき
いってきます桜入る窓閉めて出る
伸びやかなクレヨンの線に励まされ
春の風カーテン越しに触れてみる
ビー玉の上で海月が休みけり
くしゃみする通りすがりの春一番
少しずつ隠れる西日と影法師
蝉よりも娘のお喋り止まらない
色あせたアルバムに赤のランドセル
熱帯夜田んぼの声に耳すます
全力で走ったことのある真夏
送り火や見てるかそこの宇宙人
友達の友達を知る夏祭り
試験前六法全書とあつい夏
コロッケとたわし間違え初笑い
風薫る今日から苗字が変わります
冬の日の赤子の服装餅のよう
遠くからあなたが運ぶ新緑
サングラス外す瞬間立ち尽くす
春風の心地よい音お腹の子
陽光に白鷺親子羽預け
ぶつ切りの鍋がグツグツ恋炎
卵焼きしょっぱい味の昼休み
白い息映える季節に父になる
七輪の浅蜊の我慢比べかな
泣くまいとひいた口紅一文字
父の手と虫取り網を握る午後
影だけが交差していた夏祭り
弟に服を着させる兄の冬
ひび割れで過ぎし時知る鏡餅
先は秘密ひまわり畑突き進む
マフラーの巻き方ひとの愛し方
背中から朝の記憶や青柘榴
磨り生姜たんとうどんに乗せる朝
炎天の道匂い立つ小雨かな
インターフォン寒気こっくり連れてくる
黒帯がうまく結べぬ寒げいこ
初詣まだ顔あげぬ人ばかり
釣り堀に背広姿や花菖蒲
豆苗も吾も息をする午後の部屋