伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第二十九回
佳作特別賞
砂山を壊して歩く夜の海
夕凪や立ち往生の雲一つ
夏至の午後ちいさな影にこんにちは
雪の朝友達一人作れるね
深夜２時冷蔵庫だけが返事する
何も握らない手のひら冬紅葉
星涼し村から町へ変わる日の
校門の礎光る卒業す
春風や馬小屋行きの縄電車
みずみずし梨の作り手継ぎ手なし
慣れぬ空春思に耽る六畳半
冬めきて髪の綺麗な人が好き
山手線ぐるりと回る自分探し
辞書ひらくことりともせぬ夜長かな
五月雨や無人の街に沈む音
言いかけた彼を包んだ初時雨
ため息と冷めている飯夜長し
体温の伝わる傘や秋の雨
晩春のタマゴおまけと笑む店主
どんぐりを回して夕日の沈みたる
図書館にいつもゐる人秋の雨
試合後に私のお茶をそっとパス
キャラメルと交換したる雪兎
芯残る餅も楽しき寮暮らし
金柑や水玉模様の恋心
祖父母からとぼけて貰うお年玉
就活ではじめて履いたハイヒール
道案内行き先しめす白木蓮
春風が竹を撫でつつ走り抜け
牡丹雪夜の底まで染めてゆく
春先に心を融かす笑い声
電源を落として浮かぶ顔は誰
教室に漂う海月となりし夏
風花の待ちぼうけする駅の前
ありがとう僕はあなたの一ページ？
掃除した床に寝ころぶ蝉時雨
我二十歳果てなく流る天の川
さらさらと木の葉こぼれしそぞろ寒
星月夜プラットホームで見送った
百合香る夢から目覚め君がいて
駐車場冬の始めの長方形
おれをわらうのか夜鳴く蝉
靴下が吊るされている冬ぬくし
デザートの蜜柑や美術室ひとり
白い石ばかりの春の川である
頭下げなお美しいシクラメン
朝焼けと味噌の匂いと幸せと
こいびとの頬思いつつ桃を剥く
豚饅にタレつけて食ふ西へ行く
寂しいを丸めポケット初雪と
