伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十七回
佳作特別賞
帰省子のカバンは都会の弱音詰め
クロッカス付箋の多き料理本
里芋を好む年齢なり母に似し
芦別の滝より生ず雪をんな
地場産の花豆炊きて冬に入る
老い満ちて母口ずさむ聖夜かな
居眠りの子の匂ひかぐ春隣
梅雨に入る象の背中は山河かな
デコポンの黄色に元気もらってる
大切な一言いえず星月夜
戸の灯り近づくほどに虫の声
卒業の先それぞれの地平線
眠る君アリスの様に夢を見て
歯磨きの最後押しだし窓に雪
吹き抜ける風の香バレンタインの日
落葉踏む小学生の後に踏む
重ね着はか細い母の鎧かな
猫の子に声かけてゐる男かな
透明な水の流れる雪の底
靴音の確かな銀座冬の星
還暦は壊れ物なり大夕焼
朧月地図だとこんなに近いのに
南風の地今朝は島ごと綿帽子
げんげ田に寝転んでいるかくれんぼ
団栗の弾丸何を撃つべきか
春めくやジルバステップ踏む仕草
手花火やこんな近くに夫の顔
還暦の赤き自転車笑顔あり
情じゃなく愛という名の陽炎か
納豆の糸のよく引く五日かな
立春やはえてきさうな壷の耳
かけ声の裏返りたる焼芋屋
秋高し時給十円上がりたり
六十の若手が後継ぐ神楽舞い
液晶に浮かべて愛でるむかし花
かたつむり明日から君の弟子になる
あべこべに靴揃える児春一番
さよならを今なら言へる木の実落つ
北天に指突き刺せば星回る
菖蒲湯でチャンバラごっこ兄妹
碧い瞳の嫁と歩けば梅真白
留守すれば郵便受けに茄子のあり
年金で十八切符山笑う
時々は寄り道したいブーメラン
本棚のすきまに置いた香水瓶
Tシャツに十年前の流行語
マフラーを巻かれ学長像無言
九十九折り不意の乙女や山ツツジ
立春や暦の文字はさくら色
大根引く腕の太き農婦かな