伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十七回
佳作特別賞
子猫抱く従兄写真の中におり
小吉がちょうどよいねと初詣
診療所じっとしている冬帽子
初鰹ほおばる口に藁香る
夕焼けの唄のながれる町に住み
春一番ころがつてゐる鉄亜鈴
熟れながらトマトが夕日に恋してる
草の花見知らぬ猫に甘えられ
窓越しの富士にいちごをのせてみる
休日の夕焼集めバックミラー
荒行の声に詫びつつ二度寝する
月光があふるる冬の抽斗に
夕焼けがはみ出す空に母の声
煎り豆のつぶやく音も皿に盛る
銀杏を避けずに歩く児のズック
春ショール揺れて銀座のカフェに入る
旅立ちのはにかむ君に春の雪
一日の汗をぬぐなり野球帽
鬼たいじポストの上に春一つ
春うらら歩幅を少し広くして
一行を削りまあるくする手紙
かまくらや幼女にもどる母の顔
冬至南瓜全身あずけ両断す
春よいまも母の守れる父の靴
春まだか鰤は鰆に聞けと言う
ふと香り探せど見えぬ金木犀
鯉のぼり初めての靴買いに行く
松飾り起重機にわかに淑気満つ
千年の祈りの杉に蝶が舞う
空青くカーブミラーの紅葉丼
ひと夏の命絡めて蜘蛛の糸
梅の香や庭の隅から未来くる
赤とんぼはねあるものはゆたかなり
チューリップ最後の一枚空を向く
弁当の冷たさもまた二月かな
初心者といえば初心者猫の恋
冬の陽にステンドグラス魚影生む
カーナビに返事している一人旅
クーラーを止めると夜が動き出す
案山子まで顔の見えない世の中か
川音は胎児の記憶雪割草
シクラメンうつむき加減にだまされて
しゃぼん玉淋しいときは強く吹く
がぶりっと冷やしトマトの赤を食う
検査日を迎へる米のつややかさ
ゆらゆらと夏電車が登り行く
父作る煮こごりうましブリ大根
街灯ももの言いたげな長い夜
雪つりの竹先すくっと鳥一羽
手をのばし春の扉をそっとおす