伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十七回
佳作特別賞
桜散る因数分解解はなし
日記買い明日の私に会いにゆく
初空や絆創膏の多き脚
はにかみをタートルネックに隠す冬
土手で吹くフルートに蝶導かれ
宿題を闇に葬るサングラス
ウグイスの鳴き声真似る休校日
おままごとしてたあの子が母の顔
柚子実る今年は機嫌がいいらしい
囁きを遮るように細雪
うたたねに春の日差しと鳥の歌
揺られてもミジンコだって泳いでる
夕暮れやまどろむキミと猫じゃらし
夏休み金管楽器のよく響き
ばあちゃんとギャグ合戦で初笑い
懐かしい桜の下の口約束
図書館の西日はいつも影時計
法要に声のトーンが上がる祖母
雪踊る巻き込む風に華添える
狐花子どもが一人帰ってく
上京し覚えた礼儀と山手線
寒い冬恥ずかしがり屋の僕の首
内気さに被せて返すギターの音
祖父に言う八十からが青春だ
残雪を散らして走る陸上部
雪だるまなりたい顔には作らない
金魚すくい破れた紙に見える夢
寒卵どつと世界の音がする
夏潮や良きも悪きも包み込め
書き順の自由な学生竹の春
振り出しに戻って里の駅の春
訪問の会社五十か暑き夏
チョコレート想い届けば溶ける雪
文通相手きっといい人春の風
鰯雲君も立派な伴走者
部屋ひとりほおずきの実の音が響く
ため息も白き芸術冬の帰路
夕焼けに逆立ちをして「まあだだよ」
小鳥たち春の匂いを集めてる
吹雪の日知らない町で君に会え
親知らず抜くころ気付く親の愛
春一番おでこ全開照れた顔
ずっしりと根菜多き雑煮かな
恐竜の図鑑開けば秋の海
若駒の瞳に燃ゆる大舞台
かんたんな言葉で話す寒さかな
雪の上描いた轍がおれのみち
長針の速度が遅い打ち合わせ
ブランコで見下ろし見上げる僕の町
ホチキスの針の冷たき夜学かな