伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十三回
審査員賞
はがぬけた六年かんもありがとう
山下君は七歳。歯が抜けたのだ。生まれてから六年間、ありがとう。山下君はこころから感謝のことばを抜けた歯にむかって贈る。さわやかな俳句だ。似たような俳句は他にないのではないか。
せんぷうき言葉が風にとばされる
木村楓さん、とてもすてきな俳句をつくってくださって、ありがとうございました。私も言葉をつかう仕事ですから、興味をもって受けとりました。せんぷうきにとばされた言葉たちは、どこにいるのでしょうね。
おこられてマスクの中で独り言
叱られたことに、必ずしも承服できかねることがあったのかも知れない。マスクをかけたままなので、ぶつぶつと反論を口の中で呟いた。何か呟けば気のすむ程度のことだったかも知れない。
ケロケロケミンミンミンと眠れない
まるで楽しい音楽のようにメロディとリズムが感じられました。それになによりもユーモラスです。こんな風に眠れないという感覚も高校生らしくこころが動きました。ケロケロミンミンと嬉しい気持ちです。
たんぽぽが私に言った大丈夫
たんぽぽと会話できる作者。頼もしいですね。「大丈夫」と言ってくれたのですね。いかにもたんぽぽらしい言葉。嬉しくなりますね。たんぽぽの本質をとらえた感受性。とても説得力のある一行に共感しました。
受話器越し帰省促す犬の声
具体的に情景がブワァっと浮かんできて、クスリと笑ってしまった。ここの親子関係において犬はどんな立場なのだろうか、どんな役割を担っているのだろうかと想像がひろがる名作。「受話器」という言葉が少しなつかしく感じるのは、時代のスピードのせいだろうか。
いつの間に怪獣も座す雛の段
七十歳の作者が、孫のために飾った飾り雛の横を、ふと通りがかりに見たら、いつのまにか雛人形の隣に怪獣の人形が置かれているのを発見する。孫の気持ちに寄り添ってふと吹き出すおばあちゃんの顔が浮かぶようで、ほほえましい一句だ。私もつい吹き出した。