伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十三回
佳作特別賞
木曽の風競いて泳ぐこいのぼり
「了解です」ナビにレンジに答えるあたし
手荷物を抱え三十路がやって来る
北風にぬるい身体を凛と差す
赤とんぼ一人で孤独感じてる
手の皺で私の人生振り返る
木洩れ日と心ゆらして君を待つ
除夜の鐘煩悩だらけでゴメンなさい
そりかえる月のひかりを過去と呼ぶ
冬の夜あなたと眺めた一番星
幸せだいつも通りの朝が来る
青年の白き憤怒や雲の峰
育休明け雪解け共に再出発
三日月に腰掛け明日の空を読む
母の言ふ何とかなるさで冬を越え
とおりゃんせ竹しなるなり北風に
杜甫読めばほろりと白梅開きそう
春一番負けず洗濯強く干す
水模様澄ませば聞こえるアドバイス
初雪や誰も知らない音重ね
叱咤した夜道に白き息を吐く
二度寝して虹の背中を滑り降り
寒い日も子供と走ればほっかほか
夏シャツの背中ににじむ若さかな
名刺みなぴたり重なる十二月
行く末を決めかねてゐる秋の蝶
夕焼けに学ぶ心のなめらかさ
田舎から雪の便りに親想う
冬の月仰ぎて弾む会話かな
感無量日々の修練春薫る
虎落笛視線上げれば白き月
落ち葉達流れに沿って走り出す
夏蜜柑初恋の子は三つ上
いが栗を蹴飛ばしながら家路へと
故郷の干し柿祖母と半分こ
この道をただ一度だけ振り返る
紫陽花に空の涙が光る朝
高空を鳶が弧を描き夏がゆく
帰りみちいちばん星も連れていこう
世界地図開いてみれば小さいな
初雪がちょっとオシャレなベレー帽
あかぎれを勇気の出ない言い訳に
鮮やかに球体割りて涼む夜
想い出の余韻が溶けて春が来た
新しい恋の始まり春のにおい
杖も無く空を飛んでる春の夢
もう大人ようやく言えた自分が好き
両手伸ぶ卒業証書の重さかな
月光を浴びてもうすぐ母になる
春セーター雲の如くに纏けり