伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十二回
佳作特別賞
時の日や母には母の時流る
春一番冬の八分を置いて行く
やわらかに山押し上げて若葉萌ゆ
寒梅や駅離るればぬつと山
腰曲げてたたずむ母と萩の花
秋の風あなた好みの紅をさす
靄の中村一軒となりにけり
鳴く牛の声も嬉しく思う春
ドングリにヘソはあります独楽廻し
初春に飛行機雲が尾を伸ばす
飾られて落ちつきません吾亦紅
春愁や玩具の螺子を巻き直し
春霞仙人面のカラスかな
合格の長女のブーツ屹立す
どんぐりのどちらが兄か弟か
七色を一気にくずし七味売り
雛少し傾いている子供部屋
春の雪のやうな恋してばあばかな
駆け出して何から遊ぼう小春の子
木枯らしが雑木林で遊びをり
葱坊主仲間に入れてくれないか
ゆつくりを探しにくれば猫じやらし
猫じゃらし活けて私の秋とする
充電の切れかかりたる冬の蜂
こそばゆき仁王のへそや春の雷
退職し以来の日課大昼寝
さるすべり少年時代ゆらり揺れ
冬苺二才の歯形残しをり
翔んできたバッタの貌に獣の眼
編む糸に夜を閉じ込め暖炉燃ゆ
定年や犬が二三歩先歩む
また一つ失くしものして夏終る
冬蝶やぬぐい切れない空がある
父の髭自在に曲る晩夏かな
冬の夜はむかし昔で始まった
ごめんねと言えぬ強がり唐辛子
歯を立てて若さを食らう林檎かな
短日の大ぼらふいて友帰る
朝顔や内緒話にすまし顔
ぶらんこもまた中年の遊びかな
去年今年ひとそれぞれの眉間かな
赤鬼は校長先生鬼やらひ
よく笑う君とあやとり春炬燵
虎落笛おとぎ話を始めましょ
饒舌な冬満月に語りかけ
黄水仙秘密にしたきこともある
あくびして秋の夜長のマンガ本
秋色の心きらめく一人旅
かき氷勝手にしてと言はれても
列車行き絵本のごとき花野かな