伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
都道府県賞
広島県
かたつむりのはらむらまで旅行中
祖母はあみ僕はレンジでもち食べる
Tシャツでそのまま飛び込む島の海
土曜ごと母の得意な鍋が来る
夏の日はパンのように私を焦がす
山口県
逢う前の電車にゆられる時間が好き
数式で私の心を解いてみて
自転車の将棋倒しに花吹雪
さよならの角を曲がれば桜咲く
ぶらんこを春のリズムで漕いでみる
徳島県
オリオンと牛が向きあう冬の空
吊し柿中はマグマだ燃えたぎる
菜の花を雨が優しくなでている
月の夜を渡す最終便の舟
香川県
のら犬に寒いかと問い返事待つ
天の川渡れないほど遠い君
手のひらをはみ出している蓮かな
何気なくにぎるおむすび母のと似てる
雛人形今でも早くしまう母
愛媛県
かに鍋に兄ちゃんたちの腰も浮き
鼻すする音重なって冬に入る
ビルが立ち僕の記憶が消えていく
絵日記に色を付け足すカキ氷
猫を抱く二月のチョコレートは苦くて
高知県
冬という響きはどこか純粋で
寒いねと言って答える人が欲しい
白靴に放浪癖がつきまとう
春おぼろコインランドリーは宇宙船
落日の音ぎしぎしと冬の海
福岡県
中三の一番高い壁のぼる
背泳ぎで見つめる空は青い海
太陽と目が合うような雨上がり
休日の雨の良さ知る三十路かな
価値観が一周違って一致する
佐賀県
運動会負けずぎらいのあせ光る
縄張りの猫が変った冬の朝
深呼吸胸の奥まで春の味
向日葵は淋しがりやという噂
夕映えがたった一つの町自慢
長崎県
また君に金魚すくいで逃げられた
ハイビスカス赤い帽子が泳ぐ海
字あまりに大人を感じる十七歳
鬼火焚き赤い火ばしらモチの湯気
首太の貌出す大根一揆島
熊本県
ランドセルきれいにふいて卒業す
雨音は少し激しい子守歌
名作の落書き残す卒業生
大釜に顔あぶられて新茶炒る
顎少しゆるむ写楽の四温かな
大分県
猫が乗る単身赴任の父のいす
節分の増えゆく豆と顔のしわ
給料前我が家はにわかベジタリアン
手袋に善行非行の十指かな
麦踏んで地球の鼓動きいてみる