伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
審査員賞
あかちゃんてわたしのことしんじてる
純粋無垢な信頼を切り取ったこの句に、はっとさせられました。これほど邪念のない感情は確かになく、世界を浄化する力さえあると思ったからです。現代社会に生きる私たちに反省を促すような重く、また明るい句です。
大根のバキッと音立て抜けており
なんたってすがすがしい。「パキッ」という一言が入ることにより、大根がたちまち飛び跳ねる。太くて白くてみずみずしい大根が、焦げ茶色の土の中から抜け出してくる様が映像として蘇ってきます。声に出して読むと、またこの句の力強さが伝わってきて気持ちがいいです。
ウグイスも入れて君より電話かな
素直な優しさに魅かれました。恋が楽しくて仕方ない時期なのでしょう。ウグイスはそりゃ効果満点ですよね。メールではなくて電話というのも若者にしては二重丸です。
お母さん命をくれるおなかある
「命をくれるおなか」とは、ずいぶん露骨で気持ちわるいような言い方だが、少年がこんなにはっきり言ったのだ、と思ったとたんに、正直でいいなあ、と思い直していた。五七五で書くと、何を書いても大丈夫。
銀河にて眠れ戦闘帽の父よ
太平洋戦争で戦死された父であろう。天を仰ぎ天の川を見ながら戦闘帽の父を偲んでいる。ぼくも学徒出陣で大学を半年短縮、昭和十九年ボルネオに出征、三八式歩兵銃と弾丸二十五発支給されたのみであった。
啖呵切ってでんすけ西瓜ころがれり
西瓜はころがるのが得意です。でも啖呵を切った西瓜に会ったのははじめて、嬉しくなってしまいました。夏の暑さもこうして吹きとばしたいものです。それにしてもでんすけは西瓜の名前ですか。
毛糸編む君のハートもあんじゃうぞ
高校生らしく、対象としての「君」がいることで、一種の呼びかけの形をとる。ハートまで編みこむというのは、心をとらえることの究極のところまで踏みこむことが面白い。まさか、それは困るとは言いにくいだろう。