伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
佳作特別賞
干蛸を踊らせ瀬戸の小春波
ニトロが舌に溶けてゆく刻小鳥来る
樹木医の支えし一樹天髙し
素通りは出来ぬ九段の初桜
五段びな孫らは九九をそらんじる
師のこゑを心耳にとらえ梅月夜
谺してそこから雪嶺崩れそう
炎天の両国橋を渡りけり
B29の耳鳴り止まぬ敗戦忌
夫の背のいよいよ丸く冬に入る
巻寿司の端っこが好き紅葉狩
初日より夕日好みのへそまがり
レジ袋大空駆ける春一番
落葉道行けば地球が呟けり
風上も風下もなき春の空
夏雲の湧き立つ丘や戦友の墓
遠雷や男ことばの少女過ぐ
初恋も手ぶらの内は未然形
他人事に非ず大根腰曲る
初鶏の牛十頭を先導す
啓蟄や家族みんなの布団干す
猿酒を天狗が飲んでしまいけり
とんぼ来て往生際の話など
梅もぎは嫁に譲りし米寿かな
胡麻干して貧しき目鼻笑いけり
疾く走る女子ランナーに風光る
芋掘りや車椅子隊凱旋す
柿二つ墨絵に画き独り哉
若者は氷の上の水すまし
憩いたる石に一礼遍路行く
月冴えて寒さ身にしむ今日の霜
版画めく裸木刺してる寒い月
猫じやらし風のたよりのうそほんと
どこまでも歩いてみたし星の秋
杖などはいらずに暮し行く秋ぞ