伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
佳作特別賞
フルートを月の明かりに吹く子かな
花丸を貰ふ七十路の初硯
誕生日皺に重ねる薄化粧
金婚をひとり祝いし雪の舞
風が出てロシヤへ向う蕗の絮
台風が声を荒げて街走る
開店の斜めに貼られ街冴える
全山の音閉じ込めて滝凍る
安達太良を背に地吹雪の始まりぬ
太陽のあっちこっちと青き踏む
水槽に風ある如し金魚の尾
短日や金平糖の角光る
大方は病のことの古日記
生命線夫と見せ合ふ日向ぼこ
はたはたや世に忘られし石佛
日本海二月は暗きままに昏れ
花筏ゆらゆら星の子をのせて
蝸牛ゆきつく当てのあるごとく
旅に出て気さくな気持ちサングラス
風光る水の硬さを水が解き
箸袋話聞きつつ鶴となる
虹の尾につかまって行く童話村
烏瓜自由奔放次男坊
羽子板や女系家族の歴史あり
粉雪の尚しきりなる千代紙屋
花吹雪くぐり江ノ電現はれる
焙じ茶の匂ふ舗道や夏柳
八十の眉を引きたす初鏡
不覚にも風邪の問屋となりにけり
物忘れ共に笑ひて蜜柑むく
唐辛子一糸まとわず吊られけり
名月に手の届くかと仰ぎ見る
補聴器がうなる二月の風の声
金魚鉢孫は鯨を飼っており
茶を立つる二の丸稲田一望に
梅の花日毎にひらく孫の智慧
てのひらの器に蕗を摘みにけり
花莚隣は同じ国訛
良寛の歌碑につまづく冬の蝶
色いくつかさねて匂う春の闇
古語辞典机に残し卒業す
寒晴やかたまってゆくランドセル
山寺の畳に西瓜かしこまる
山茶花の咲く裏口に水音す
車椅子押されて通る蝉しぐれ
よちよちの歩みに疲れ亀鳴けり
華やかに座敷占められ女正月
餅花の灯影に鳴れり古時計
寒がりの母の墓石に雪積る
雪だるまみんな帰りてしまひけり