伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
佳作特別賞
勝独楽は宿題帳の上に置く
厨まで芝火の匂ふ昼餉かな
故里の水湧く野辺に芹を摘む
それからの話聞きたく火を埋める
木漏れ日や森が温めている童話
凧に乗せお日さまを引く親子かな
浴衣縫ういまだ本物糸切歯
軽鳧の子を見ている空気丸くなる
夕焼やまだ忘れ得ぬ大空襲
風薫る軍手干さるる四つ目垣
鶴だけは折れる指先原爆忌
わが菜園七坪弱の初嵐
夕日より真赤な蟹を釣り上ぐる
桑の実を道々取りて登校日
天までの距離知りたくて烏瓜
初釜やまあるく使う寒の水
小鳥来るセピア色なるちちとはは
逆光の影が手を振る冬茜
松風の香りが軒を通り過ぎ
雨止めば啼かずば損と囀れる
目に沁みる新幹線のお茶畑
土匂ふ無人の売場の冬大根
海広し空なほひろし鰯雲
鶴亀を生む初市の飴細工
空蝉やわれにも欲しき力瘤
ぶり大根氷見の言葉で喰べており
登山口足腰とんとん確かめる
追いかけて追いかけられて十二月
子らがみな眩しくみえる初日の出
冬うらら干物に残る海の色
雛あられ母の遺影に色添へる
日向ぼこゆっくり生きてゆくつもり
捥ぎたての遍路にあげる夏蜜柑
飛びこんだ力で浮かぶ蛙かな
足るを知る暮ししあはせ朝顔咲き
さくら餅妻にマニキュアらしき艶
花辛夷にはかに動く村百戸
放牧の馬コ見に行く握り飯
激動の昭和を生きて耕せり
おみくじをそっと引いたる小正月
園児らの指は手品師衣被
澄む秋の色となるまで拭く眼鏡
こんにゃくのちりちりちりと霜の夜
踊の輪見て居る手足おどりけり
出来不出来ありて寄せ来る春の波
毛虫にも目立ちがりやの居たりけり
スリッパのちらかっている目借どき
たんぽぽよれんげよ遠きふるさとよ
百八ツ煩悩すべて置いて行き
茶の緑春の緑と重なりて