伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十七回
佳作特別賞
鈴虫や君の弱音が聞こえるよ
初雪やパントマイムのように降り
梅ひらき心の頬にも紅がさす
無人駅風とトンボが乗車する
鉄棒にきらきらと星春休
海を背に君の輪郭ゆらぐ夏
秋の暮空の広さが寂しくて
菜の花を束ねし朝の雷雨かな
赤とんぼ里に別れをつげる今日
悠然と天をしたがえ凧あがる
鈴蘭のキュッと咲いてる峠道
花曇り身体の機嫌にすぐ負ける
ニアミスもひょいとかわして夏燕
鉄棒にぶらさがっている秋思
鬼の面脱いで目尻に笑い皺
恋猫の背中は星を運ぶ鞍
踊り子の電池の切れる炎暑かな
美しい過失のように青田の鷺
大雪が大雪のまま過疎の村
作業場をひらりひらりと揚羽蝶
秋風やクレオパトラの鼻の先
絵日記に収まりきらぬ夏祭
だとしても雪の荒野で待つ気はない
紫陽花に由緒正しき今朝の雨
七色の夢包み込む春キャベツ
蚊帳吊りて昭和の中に入り込む
唐橋を履きてたちたる昼の虹
気持ちだけ出勤したる朝寝かな
落椿またアドレスの一人消し
朝顔に夢の続きを聞いてみる
春の星母やさしくてこはかった
馬の耳左右に向きて秋の雲
揃わない七草唱え粥とする
鶯の鳴き渡りたる陣馬山
爺入歯どすんと落ちて福笑
松茸の今年も話だけの秋
蝋梅が指し示したる深き碧
途中下車して芒野の芒になる
夢ひとつ入れてふくらむシャボン玉
下校児の声聞き分けむ葱坊主
しんしんと明日炊かれる豆ねむる
早春や完走の子を母が抱く
どこまでも遠灯凍えるオホーツク
何事も無くて宗谷の初日の出
窓ガラス花びらひとつ受けとめて
太陽の直撃くらうシャボン玉
散りゆける力蓄え寒椿
冬の海風がちぎれて風になる
この腕に抱えこみたや秋の空
いつまでも指ねむたくて牡丹の芽