伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第十七回
佳作特別賞
君がいない桜の木の下いつも見ている
狛犬も背筋を伸ばす戌の年
蒼い夜月に腰かけ星を釣る
音楽が二人の距離を近付けた
桜舞い風のかたちを知らされる
自転車で冬の景色をかけぬける
がみがみとうるさい母はセミのよう
スイカわりみんな楽しくはずしてる
接尾語は無音なりけり終戦日
サボテンは私の怒った顔のよう
タンポポのポポを吹き消し夢叶え
風吹いて仁王立ちする案山子たち
北風に負けてたまるか橋の上
またひとつ増えて嬉しいこいのぼり
五月晴れ動く濁点カタツムリ
追い越した髪掴みたい徒競争
甘酸っぱい二人の間みかんむく
寒そうな木を見て一つ咳をする
囀りを四方に聞いて歩く故郷
時語る古びた名簿と友の顔
ジャンプしてさくらにふれた指の先
お雑煮の餅より丸い母の顔
かたぐるま少し近づく入道雲
風はなしならば走って感じよ十七歳
宿題とチャンネル片手に年を越す
雪化粧目を覚まさせる寒椿
鏡もち割って今年を切り開く
この冬は母の遺伝子我がかかと
反抗期何より自分に腹が立つ
春の雪心の中にふりしかな
木枯しに吹けない口笛吹いてみる
平和とはこんな静けさ雪の空
先生の愛妻弁当食べてみたい
美しい祖谷のかずらの雪化粧
たまにある静止画みたいな授業中
未来への葉脈路地に迷い込む
あぐらかく父の背中に冬をみた
石鎚が懐に抱く雪景色
セーターの恋しちゃった林檎色
草千里たてがみゆらし馬走る
冬枯れに似合う親父のニット帽
墨の香で思い出すのは祖父の顔
紙漉きで紅葉の葉っぱをコレクション
冬苺うちの兄貴も早生まれ
のんのんと綿雲浮かぶ五月晴れ
いつもはいない父の手からのお年玉
逢えるかな逢えるといいな天の川
アキアカネ夕焼け空に同化して
三つ編をほどいた髪に春香る
幼き日素手で素足で蛍追う
