伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
都道府県賞
広島県
おもちゃだね雪の山から見る町は
墓参り犬と一緒に手を合わす
太陽と同じにおいの夏蜜柑
図書館の空席増えて春爛漫
手であける電車遠くに山笑う
山口県
風鈴が存在理由かき鳴らす
二代目の猫も丸顔柿の秋
鵯の枝搖れやまず鳴きやまず
紅梅の言い分風が聞いている
竹馬の足で地球の肩たたく
徳島県
サンタさん気をつかってねだん消し
母通るおせちのにおいおいていく
向日葵とおんなじ向きで走り出す
二度三度母に振り向く冬帽子
ひぐらしや潮の匂ひの子が戻る
香川県
ひと恋いのかなしみに似て野火猛る
助六は凧となりても見栄を切る
白鷺の川辺に佇む遍路かな
梅小径凛たる人に会いにけり
北斗星生涯変らぬ臍の位置
愛媛県
銀輪の燕になりて君ん家へ
釣船のかたまる岬春隣
魚屋のバイト帰りのうろこ雲
おちゃらかほいみかんの匂う手を合わせ
木枯しを横切って来るEメール
高知県
おばあちゃんの右にならって花いける
崖に咲き海を見下す寒椿
いつまでも龍馬が見渡す太平洋
灯を消せば虫の音だけの夜となり
Gパンの裾折り上げて蝶になる
福岡県
光あびねぎの背中はピンと立つ
夕焼けと同じ匂いの赤とんぼ
思ひ出を削除しますかはい・いいえ
蛤のカスタネットが鍋叩く
雑踏の一円玉はじっと堪え
佐賀県
図書館で淡い恋でも借りようか
砂利道の不揃いの音弾ませて
水音のひそかに蛇の泳ぎ出す
教師にも医師にもなれず葱坊主
べた靴の新聞少年雪三寸
長崎県
新聞よ明るいきじをのせてくれ
祖父からのふるえた文字の年賀状
晴れるかなだって明日は海びらき
白い杖そっと手を添え寒椿
底抜けに青一髪の冬の空
熊本県
黒い線はたらくアリの冬支度
沢ガニを優先させる夏の道
武者凧に上れ上れと通信す
冬木立赤い帽子が駆け抜ける
大正の気魄みなぎる寒稽古
大分県
二人きりいつも以上の心臓音
練習後部員で囲むたき火かな
元旦の日の出祈られ荷が重い
似たやうな背中のふたり日向ぼこ
煮凝りの奇妙を挟みそこねけり