伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
審査員賞
初もうで列かきわけてく父はカイジュウ
現代のお父さんはすっかりひ弱になり、家族のなかで怯えている姿ばかりが目につくが、この句に登場する「父」は逞しく、そしてユーモラスである。そんな父親の一面を見出す子供の気持ちが、読んでいてうれしくなる。
桃の実のなかの極楽浄土かな
世界はマクロとミクロで成り立っています。そして面白いことにミクロにもまたマクロはあったりするのです。作者は桃の実の中に宇宙を見つけました。
きもだめしとりあえず「キャー」と言っておく
「キャー」くらい言っておいた方がかわいらしいし、おどかしてくれている人への気遣いもあるし。そういう社会的な体面と、自分へのユーモラスな視線が上手に混ざり合っていて、思わずにやりとしました。
運動会転ぶ姿も絶賛し
運動会を使った俳句は多いが、転ぶ姿を絶賛する俳句というのは珍しい。愛嬌があってよろこばしい。
元旦は家が一番きれいな日
一番きれいな日は正月元旦、大掃除も終って気持ちまでもが一番新鮮な日だ。
風邪ひいて時計の音が響く部屋
風邪ひいて時計のある一室に心静かに寝ている。時計の音だけがコチコチと心に響いている思いがする。風邪ひいて一人寝の心を的確に表現した秀れた一句だ。中学生の正直で素直な作品に感銘した。
冬限定美しかった僕の町
青年期に突入しようとしている瑞々しさを感じました。思い出とはなってしまっていない、まだ身体の中に残っている美しい町。これからの第一歩が楽しみです。