伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
棒針で光編み込む冬帽子
塵払ふ小学図鑑小鳥來る
初鏡八十路の紅をさっとひく
柿を食ふ貌すさまじきひとりなり
春一番老ひの背中を押してくる
春一番花粉と共に来て憎し
ひとつづつ消えゆく過去やしゃぼん玉
大川瀬ダムを包みて梅の花
春雪に朱の鳥居のはなやげり
滴りといふ水美しき流れあり
大雪野一列無言修行僧
アメリカの人も交じへて芋煮会
水匂ふ青田の中の帰り道
シャワー浴ぶ長子眩しく卒業す
アカペラの校歌が胸打つクラス会
マフラーの好みシックな帰省の子
信濃路の吾は旅人木の実落つ
哲学の顔してかまきり肥えられず
山鳩の含み啼きして冬に入る
噛まれても笑う西瓜の大歯形
ほうほうと障子にたまる鳩の声
余生とは手持ち無沙汰となる孤独
粽しっかり抱いた「やまびこ」自由席
梅一輪針塚濡らす小糠雨
着ぶくれていまなほ身元保證人
手鏡の化粧くずるる大西日
寒椿ひとりで咲いてひとり散る
星流れ神話に遠きバター塗る
難聴の拍手音もなく冴ゆる
春雨や遺影を撫でて客帰る
茶を啜り今日一日の幕が開く
土間の灯がふっと消されて夜業終ゆ
起伏なきわが晩年の日記果つ
春愁や村中の音みな和む
向日葵の私語とどかずにふと笑ふ
白鷺が降りて絵となる鮎の川
万緑にまぎれてしまひそうな寺