伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
少年の脱皮を終えし夏果てむ
みずうみに彩にじませて遠花火
両足をどさっとなげ出す遍路宿
宙返りできてまあるい月に会う
土返す老婦の背なや朧月
風磨く神のお池の氷面鏡
ひまわりに手の届くまで肩ぐるま
大振りの木綿豆腐や針供養
手さぐりの老母に渡せし茶の温み
かりんの実貌のいびつがいとおしい
カトレアの好きと言う子が転校す
結び目のこじれて解けぬ余寒かな
縄跳びにくぐりて入る必死かな
笑栗の一つひとつに空があり
春の田へ足の指紋を配りをり
すくすくと伸びる野菜を撫でてやる
春時雨くず湯の中に祖母がいる
犬小屋の犬の退屈春疾風
あぢさいに百の家族が棲んでいる
河童忌や手垢のこりし一書あり
龍田姫ふはりと樹樹の色移る
あつまればみな派手好み曼珠沙華
満月の中で輝く日本地図
県境ひょうたん島の草紅葉
水中花根もなく咲いて子は遠し
洗濯機家族の絆からみ合い
湿原の水の大地に鶴が舞う
軽々と風を抱きて竹の秋
沖に浮く舟のまぶしき二月かな
孫の爪肩にくいこむお馬さん
ハーモニカ吹けば広がるうろこ雲
孫の手のころがっている春隣
クーラーを消せば遠くで盆踊り
二色の潮にまみれし鱵汲む
山吹をさけて裏戸の片開
子の丈に合わせて飛ばすしゃぼん玉
手文庫の中の少女期桜貝
コンパスに起点のありて春立てり
天の子のちぎり遊びや牡丹雪
食卓に西瓜ごろんと欠伸する
大仏と目線が合うて桃の花
参ったと平身低頭の余寒かな
寒菊の色よきことを筆談す
蛇口洩る一滴二滴寒ゆるむ
瓜坊のころげ落ちたる神の池
七草の厨にあれば土匂ふ
座を立てば水仙の香も立ちあがる
眞向ひに天守閣見ゆ卆業す
捨てがたき手袋片方ばかりなり
春立つ日森は樹氷に輝やけり