伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
先生は違ふ桜を見てをりぬ
納豆の糸に巻き込む初音かな
ピッチャーの仕草になるや福は内
撫子の浴衣懐かし乙女の日
ピストルが鳴りてプールが沸騰す
つばきより赤き帽子の地蔵さま
炎昼や足の届かぬ三輪車
初つばめ小学校を根城とす
行商の老婆の背かごに春薫る
雨宿り燕に軒先ちょっと借り
絵のような海見ています黒日傘
菜の花や五〇年目の同窓会
福の豆こんなところにありにけり
消しゴムの滓をふやして春愁
子供らと踊りあそびし花の原
白壁に赤きソロバン吊るし柿
秋静か鳥の止まりし枝の先
口唇にそっと春色ひいてみる
影のびていよよ気の立つ球児かな
摩周湖の水青ざめて若葉寒
閑かなる母のふるさと凧あがる
炉火に灰かぶせて母の今日終る
玉砂利が軋み輝く初日の出
一人では抱えきれない春が来た
やはらかに空の近づき桜満つ
通せんぼしても虚しや秋終わる
病からぬけ出せそうな春の音
あるがまま受け入れ卒寿笑顔よし
雪降ればこもれる母か茶を送る
よその子と九九唱へつつ土筆摘む
センチより尺が身につく針供養
悩んでる木などはないぞ山若葉
ガラス戸の中をうかがう冬の蝶
秋祭り綿菓子ひとつ買いに出る
東京は通過する街一葉落つ
雪おろし銀山郷を守りけり
せがまれて孫と公園をはしごする
山肌をさくらづくしの色に染め
かくれんぼまだ見えている昼の月
絵手紙を持ってさがしぬふきのとう
月見草狐が美女に化けし原
サンマ焼けご飯も炊けて恙なし
俎板を使わぬ嫁の鮭料理
隣りまで掃いて我が家を光らせる
燈台がタクトを振って海明ける
身ひとつの入退院や返り花
立春にフランスパンを立てて行く
凜として昭和八十年の初灯し
猫の手も孫の手もほし稲を刈る
定年日通勤列車に黙礼す