伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
雪だるま笑っているのに溶けていく
春寒や他人のごとき鼻の先
黒潮を裏返しつつ秋刀魚焼く
秋時雨五百羅漢に我の顔
焼芋の匂いが曲がる路地の角
めざし干しシベリア風でゆれている
憂きことは胸三寸に土筆煮る
遠来の孫去り今朝の戻り梅雨
二月来る薄荷のような風連れて
バラを抱く妻です僕はカスミ草
蝉殻を三個下げたり将の墓
想い出を暖めている雪明かり
凛々と光まとひし冬の滝
雪合戦子供の声が好きな雪
星涼しアラビアンナイトの幕が開く
蓮掘りや両手で足をまず抜いて
月弥生ふたつの影の柔らかき
なにもかも春まで隠す重い雪
草餅を食べて乳房の柔らかし
日だまりの木の葉かさりと動き出す
初恋は未完がよろししゃぼん玉
子らすでに男のにおいねむの花
山法師実になつかしき甘さあり
流氷も浮世も片道切符かな
人間に会わずに一日冬籠り
夕焼けや淋しいときは水匂う
青春と言えるかどうか黄水仙
紅葉散る十二単をぬぐように
麦踏んで地球の未来疑はず
横文字が少しは読めて燕来る
屋根雪がドドーンとおちて春が来る
恋猫の行方不明となりにけり
藁塚に上手く隠れて寝てしまふ
残雪の明りがたより座禅堂
あれそれで会話している共白髪
戸締りの要らぬ離島や枇杷熟るる
かまきりに挑発されて草を刈る
渋滞の牛馬優先天高し
天国の静かさにあり蟻地獄
人影をむっつりと置き枯野原
鉛筆のタクトに合わす春の歌
毎朝の我流体操枇杷の花
梅白し女優の鼻の高すぎて
鮟鱇に睨まれ一歩退けり
米研ぎて妻に夜長の始まりぬ
妊りし教師のくさめ春立てり
貝割菜何だなんだと芽を出しぬ
貝殻で幼子すくう日本海
鶯に先を越されし目覚めかな
メランコリーな背中を三日月追いかける