伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
初氷三ミリほどの寒さかな
ぐるぐると朝をかきまぜ納豆を喰う
星月夜欠伸してゐる深海魚
夏の夜を終える儀式のビール注ぐ
雪だるま七難かくして澄ましけり
あの子の名砂に残して夕焼ける
白い杖君を友とし歩く道
汐の香を土産に帰るアサリ掘り
オリオン座さえてかたむく竹林
枯野原何処かに春を隠してる
初凪の海は仏の顔を持つ
どんぶりを持ち出してゐる年の豆
万象の影の一つの冬木かな
引っ越しは星に近づく田舎です
街路樹もブルッと震えて雪落す
夏の波つぎつぎ白き帆となりぬ
少年の全身で食ふ西瓜かな
脳天をつつと叩いて寒さ入る
二重虹町に童話の屋根並び
花よりも団子よりもあなたです
ふる里に想いめぐらす雪俵
春大根もう肥れぬとひしめきぬ
病院の出口でほほえむ雛人形
赤とんぼ巧みに空にとどまりて
薔薇の雨うなだれてもいいんだよ
ビー玉を沈めて水の青涼し
古雛のほかには誰もいない朝
思い出はドーナツ盤の針のみぞ
図書館の耳たぶ朱い受験生
老眼鏡掛けて見たいものだけを観る
春風に日の斑の水面輝けり
古井戸の底まで透ける盆の月
劇場を出て風花の街に散る
底冷えの宿直室の新暦
欠伸して床屋で春を迎えけり
靴下の穴を忘れるほどの春
学校に秋はこぼれていたりけり
夕焼けを追うて石段駆け登る
焼芋を人と分けたる甘さかな
骨量のしゃんとしてきて鳥帰る
薫風をしかと掴みぬ試歩の杖
桜踏み振り返っては春を往く
秋立つや少しだけ髪のばそかな
万緑や骨になるため柩打つ
夏空をつついておりぬクレーン車
マグマ噴くやういっせいに曼珠沙華
雪虫があとついてくる山仕事
起床時の声で命の再確認
立春の風に甘味のありにけり
定年やしばし緑陰去り難し