伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
影揺れて異次元開くこの猛暑
霜柱踏んで遅れる通学路
雪晴れてまぶしきまでの人の影
窓を開けたら星空とつながった
雪虫に思う故郷の親の顔
雪娘迎え入れたし侘住居
まだ誰か隠れていそうな秋の暮
極月のふんわり揺れるカレンダー
せんこう花火海辺の風にとられそう
手に入れてたちまち飽きてからすうり
不運など笑いとばして春は来る
蛇穴を出てたっぷりと日を濡らす
光合成す少年も楡の木も
枯れ木立何だかひとりになりたくて
大根の抜け穴少しあたたかい
凧揚げて地球まるごと吊り上げる
露天湯に日々のくらしの溶け出せり
寒い夜入りたくない風呂ゆずる
正月の母の煮物が好きだなあ
赤とんぼ夕日が羽を通りぬけ
富士を背に出初めの法被空を切る
跳び箱がとべてポカーンと秋の空
三月のプリンのような昼寝かな
雪原まさに白が白である証拠
縄跳びの声のうしろで山笑ふ
夏の雲小さいほうはポチだよね
立冬や口にあそんで黒砂糖
大寒の光体として君来る
お年玉あてにするなと前おきし
二年越しの雪踏みしめて初詣
幾千の春眠乗せて電車行く
ボタン雪ただ一心に降ってをり
冬帽子福耳すっぽり包みけり
延着のバスを横切る花吹雪
福袋破くばかりに中のぞき
早春は影絵のようにやって来る
冬枯れに赤きつぼみの勝気かな
クレソンのスープさしだす雪の夜
寝入りばな手拍子みたいに蚊を叩き
同窓会会わぬが花という時も
背伸びしてむりに刻んだ柱キズ
カワセミが飛べばカメラの連写音
梨の香とふるさと運ぶ新聞紙
寒卵飲み恋人に昇格す
凹凸の書き順教え新学期
ラケットの風切る音もつめたいね
落ちそうな大きな月にクラクション
冬蜂の死したる脚が脚を抱く
満天をひとり占めして木守柿
踏み込んだアクセルの先夕日落ち
