伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
秒針を目で追う頃は春だった
満月にまだ見ぬ夢を映し出す
田舎煮を久々食べて母見たし
小さな手どんな未来をえがこうか
マフラーを余計に巻きて君待てり
下を見て空を見上げて涙拭く
サクラサク未来の切符受け取りて
日だまりに心をおいて一休み
やり終えたジグソー崩す熱帯夜
あららぎの頂上極め春を見る
春風に気持ちも溶けだす日曜日
冬空に弦音の響凛と冴え
母の着物借りて大人の仲間入り
冬空にだれかが貼った下弦の月
夏の扉君が居ないと入れない
俯いて半分になる冬木立
白雪が淡く色づく春近し
北風が早く帰れと背中おす
失恋と同時到着サンタさん
葱刻み口実探し一人泣く
サスペンス見すぎて母は名刑事
らりひらり舞わぬ蝶でもらりきらり
なにごとも意外とどうにかなるもんだ
飛び込んだ真っ青な海無限大
あの頃を額に飾って並べたい
カーナビを頼りに走る小旅行
あらいやだ!昔話に花が咲く
過ぎし日の涙も飛ばせ春一番
恋が散り心に吹いた新芽かな
採った蝶放す優しさと寂しさ
靴を買う春の光に誘われて
初任給握りしめて帰路につく
どこででもひとのやさしさふれあえる
ほろ苦い菜の花ひとくち春が来た
積雪に喜びつつも遅刻かな
青空が綾取りしている送電線
真夜中の周りの音はクラシック
大空に一筆書きの水平線
目が覚めて雪の匂いに心浮き
この思い蝶々にたくします
靴ずれを我慢しながら初勤務
コスモスが寂しく揺れる廃線路
赤黄色寒くなるほど世界がかわる
五年経ち変わらずあたしの片思い
帰省して初めて気づく星の雨
いきあたりバッタリ旅のいいところ
ビー玉をはじいた指が夏に触れ
春来るな内定通知よ先に来い
隙間風僕のピッコロどこですか
並木道落ち葉のシャワー降らせるよ