伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十六回
佳作特別賞
切なさは十七年目の冬の空
父親の何げない一言やさしさいっぱい
「また明日」手を振る君と揚羽蝶
どこまでも自転車とばして駆ける夏
泣きたくてでも泣けなくて空を見る
夕焼けが真っ赤に怒って背中押す
一年が賽銭投げて始まった
もたれてはいつも黄昏れバスの窓
しもやけの律儀さ悲し冬の足
単語帳片手にカイロにぎりしめ
秋の日のプラネタリウムふたりきり
風の音春はまだだといっている
祖父の手の最後のぬくもり鮮明に
紛争はいつも誰かが泣いている
スキップで靴も一緒に歌いだす
急ぎ足ゆるめる優しい茜空
宝とはまたなと言える友がいる
さんま焼く空は夕暮れ鰯雲
まだだれも踏まない雪をとっておく
風が吹く今日から僕は雲になる
語りゆく沖縄の過去夏の波
お好みのシロップかけたい雪の道
誕生日むかえた祖母に花束を
みやげ屋のはたをゆらした冬の風
さむいこと一人になってふと気付く
同じ雪見てると信じ歩き出す
細雪TELの口実作りたり
金網の向こうで冴えるキックオフ
校庭に最後の一歩踏みしめる
夕空に歌声高く「赤とんぼ」
さわりたいカイロのようなあなたの手
無機質なメロディ響く秋の朝
レンコンの穴をのぞけば予言者に
怖いフリして指絡めた夏の夜
田の中に麦わら帽子がぽつりあり
思い出を消すと携帯が軽くなりました
十二月八日すべてはこの日に始まった
おてつだいそっと横からかわいい手
被災地で命の重さ知った僕
林檎飴負けずに頬も赤くして
大晦日年を締めるは牡丹雪
篠山の霧が枝豆実らせる
思い出を集めてできた雪だるま
もちつきの音どこからか丹波霧
誰よりもスキーのうまいカメラマン
青竹のように伸ばしてみる背筋
山ノ手線雷神様もうたたねです
卒業式涙を花粉のせいにした
去年よりきれいに見えた桜道
さくら色私の恋も満開に